新・三つの棺-「幻影の書庫」日記

本格ミステリ書評サイト「幻影の書庫」の旧管理人のブログです。カテゴリー欄の全レビュー索引より、書評、映画評、漫画評、その他評の全一覧リストを見ることが出来ます。同じくカテゴリー欄の年間順位表より各年度の新刊ミステリの個人的ランキングを確認出来ます。

book

黒牢城

黒牢城作者:米澤 穂信KADOKAWAAmazon 4大ミステリランキング初の全制覇、直木賞、山田風太郎賞ダブル受賞と、 究極なくらいの一人勝ちだった本作。 ミステリとしてより以上に、この歴史小説としての価値が 多くの人に認められたのだろうな。 というわけで、…

ビブリア古書堂の事件手帖Ⅲ 扉子と虚ろな夢

ビブリア古書堂の事件手帖III ~扉子と虚ろな夢~ (メディアワークス文庫)作者:三上 延KADOKAWAAmazon シーズン2のプロローグ作品。 ……という趣だったと思う。 これからの作品を含めて、扉子編を一本の映画に仕立てるなら、 本作のエピローグの後に、シリーズ…

レオ・ブルース短編全集

レオ・ブルース短編全集 (海外文庫)作者:レオ・ブルース扶桑社Amazon 本当の意味での短編全集なんだ。 世界初紹介の未発表草稿10編を含む 著者の遺した全短編40本を完全網羅したもの。 ただ、著者の長編に於ける本格性を期待してはいけない。 本書の約3/4を…

月灯館殺人事件

月灯館殺人事件 (星海社FICTIONS)作者:北山 猛邦星海社Amazon 最後の一行の衝撃!!! とはいえ、正直、最初の瞬間は「きょとん」だった。 どゆこと? ……(しばしの間)…… えー、そういうことぉ~! えーー、そういうことぉ~~!! えーーー、そういうこと…

レヴィンソン&リンク劇場 突然の奈落

レヴィンソン&リンク劇場 突然の奈落 (海外文庫)作者:リチャード・レヴィンソン&ウィリアム・リンク扶桑社Amazon 「皮肉な終幕」に続いて、これで完結。 これまたほんのちょっぴりのツイストが入っただけの、 ちょっとだけ洒落たクライム・ストーリーばかり…

名探偵は誰だ

名探偵は誰だ作者:芦辺 拓光文社Amazon 「犯人でないのは誰だ」「殺されるのは誰だ」「捕まるのは誰だ」「罠をかけるのは誰だ」 「生き残ったのは誰だ」「怪盗は誰だ」「名探偵は誰だ」の変則フーダニット7編。 さすが芦辺拓らしい凝りッぷりの趣向の作品集…

ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人

ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人作者:東野 圭吾光文社Amazon 重い真相、重い心理、といった作品が自分の主流になっちゃったんで、 ちょっと軽めのミステリを、といったところなのかな。 ガッツリのミステリは重くて入らないというときの 軽食にはい…

さよならに反する現象

さよならに反する現象作者:乙 一KADOKAWAAmazon 乙一、久しぶりだな、と書評リスト見てみたら、 最後に読んだのは2009年1月。もう13年半も経ってたよ。びっくり。 それだけの歳月を経ての再会としては、正直残念な出来映えだった。 まずはタイトルに惹かれて…

白鳥とコウモリ

白鳥とコウモリ作者:東野 圭吾幻冬舎Amazon 作家生活35周年記念作品 『白夜行』『手紙』……新たなる最高傑作、 東野圭吾版『罪と罰』。 あっ、偉そうに東野圭吾語ったりしてたけど、 上で最高傑作として挙げられてる「白夜行」「手紙」は 選び抜いたように読…

記憶の中の誘拐 赤い博物館

記憶の中の誘拐 赤い博物館 (文春文庫 お 68-3)作者:大山 誠一郎文藝春秋Amazon さすが大山誠一郎と思わせてくれる作品集。 一生付いていくつもりではあるが、それにしてもこのアベレージは驚異的。 いったいどんな発想の泉を持っているのか。 本作だって、…

透明な螺旋

透明な螺旋作者:東野 圭吾文藝春秋Amazon ある意味、器用なだけの作品。 ミステリというよりはお話の創出。 良い具合にお話を組み立てて、 ミステリっぽく良い具合に逆転劇は入れ込んで、 シリーズ読者が食いつく良い具合の新事実という豪華付録付き。 付録…

密室黄金時代の殺人 雪の館と六つのトリック

【2022年・第20回「このミステリーがすごい! 大賞」文庫グランプリ受賞作】密室黄金時代の殺人 雪の館と六つのトリック (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)作者:鴨崎 暖炉宝島社Amazon これこそミステリのためのミステリ。 密室のための密室。 リアリテ…

死亡告示 トラブル・イン・マインドⅡ

死亡告示 トラブル・イン・マインドII (文春文庫 テ 11-47)作者:ジェフリー・ディーヴァー文藝春秋Amazon 「クリスマス・プレゼント」、「ポーカー・レッスン」に続く、 第三短編集を二冊分冊したものの第二弾。予約順番の都合で、こちらが先に。 前二作がい…

パラレル・フィクショナル

パラレル・フィクショナル作者:西澤保彦祥伝社Amazon 著者お得意の特殊設定SFミステリ。 当初予知夢が運命決定論的なのか、可変なのかってとこが、 ちょっとあやふやな感じがして違和感を覚えてしまった。 そんなのとっくの昔に実験して確定させているだろう…

映画で読み解く「都市伝説」

映画で読み解く「都市伝説」 (映画秘宝COLLECTION)作者:ASIOS洋泉社Amazon 書影の著者名にあるASIOSとは「超常現象の懐疑的調査のための会」というものらしい。 本書では、映画の題材となった「悪魔祓い事件」「超能力」「アポロ計画の陰謀」 「爬虫類人」「…

ザ・ベストミステリーズ2014

ザ・ベストミステリーズ2014 (推理小説年鑑)講談社Amazon 基本的には毎年読んでる傑作選だが、これも読み逃していたらしい。 この年の「ベスト本格ミステリ」はどんなんだったんかいなと、 自分の書評見直してみたら、なんとこの年は初収録作家ばかり。 それ…

世界推理短編傑作集 6

世界推理短編傑作集6 (創元推理文庫 M ン 1-6)東京創元社Amazon 「海外ミステリ百選」でも別格編として挙げているように、 乱歩編の「世界短編傑作集1~5」は、まさに自分にとってのバイブルである。 これは本当に日本が誇るべき、偉大なるアンソロジーだ…

N作者:道尾 秀介集英社Amazon 全六章。読む順番で、世界が変わる。 あなた自身がつくる720通りの物語。 非常に興味深い試み。 なので、まず読み始める前に、こういう着想で本を作るとしたら、 自分ならどういう構想にするだろうかと考えてみた。 そうだな、…

時計屋探偵の冒険 アリバイ崩し承ります 2

時計屋探偵の冒険 アリバイ崩し承ります2作者:大山 誠一郎実業之日本社Amazon 冒頭の「沈める車のアリバイ」が大山誠一郎とはとても思えないほどの 単純すぎる代物で(だって本格ミステリにおける溺死の過半数はこれだよな) いきなりの劣化かと冷や冷やさせ…

円 劉慈欣短篇集

円 劉慈欣短篇集作者:劉 慈欣早川書房Amazon 「三体」の作者の短編集。 無尽蔵のアイデアが盛り込まれ、基本的には奇想SF、 ある意味バカSFと評しても良いような「三体」の作者は、 いったいどんな短編を書いているのか。 特に本書中で唯一既読だった表…

ザ・ベストミステリーズ2019

ザ・ベストミステリーズ2019講談社Amazon 2021を書評リストに登録した際に、これが抜けてたのに気付いた。 ちなみに2014も抜けてたみたいだから、これもそのうち借りてみよう。 本格作品が一編も無い。 他の作品もさほどツイストが効いたものも無い…

ザ・ベストミステリーズ2021

ザ・ベストミステリーズ2021講談社Amazon 読み物としても、ミステリとしても、小粒ながらも粒ぞろいの印象。 本格も多いし、そうでない作品もミスリードなどの手筋が利いた作品ばかり。 今年は協会賞に納得。私のベストも結城真一郎「#拡散希望」だな。 ま…

本格王2021

本格王2021 (講談社文庫)作者:笛吹 太郎,羽生 飛鳥,降田 天,澤村 伊智,柴田 勝家,倉井 眉介,方丈 貴恵講談社Amazon 文庫になって三年目。 これまでの中では、本格度は比較的高めになったような気がする。 バラエティ感を重視というよりは、ちゃんと本格目線…

僕が答える君の謎解き 2 その肩を抱く覚悟

僕が答える君の謎解き 2 その肩を抱く覚悟 (星海社FICTIONS)作者:紙城 境介星海社Amazon おお、凄い。 昨年度のロジック本格のNo.1だな。 ラノベ仕様で、この知名度の低さで、本ミス11位は大健闘だけど、 あらかじめ評判になってたら、もっと上位に食い込ん…

一人称単数

一人称単数作者:春樹, 村上文藝春秋Amazon 村上春樹の短編集って、相当久しぶりに読んだ気がするな。 Wikipediaで短編集の出版履歴見てみたけど、おそらく90年の「TVピープル]以来で、 久しぶりというより、30年以上振りだったようだ。長編は結構読んでたの…

卵の中の刺殺体――世界最小の密室

卵の中の刺殺体――世界最小の密室 (本格ミステリー・ワールド・スペシャル)作者:門前典之南雲堂Amazon バカミス好きの自分にとっては、門前典之は大好物なんだけど、 本作に関してはあまり感心できなかった。 そもそもこの卵を密室と呼ぶのに違和感を感じまく…

混沌の王

混沌の王 (名探偵「オーウェン・バーンズ」シリーズ)作者:ポール・アルテ行舟文化Amazon これが「名探偵オーウェン・バーンズ」シリーズの本来の第一作目。 なるほど、これは順番通りに訳せなかったはずだ。 「あやかしの裏通り」から始めるのは納得。 で、…

名探偵に甘美なる死を

名探偵に甘美なる死を作者:方丈 貴恵東京創元社Amazon いずれも秀作だった「時空旅行者の砂時計」「孤島の来訪者」に続く 〈竜泉家の一族〉シリーズ第三弾。 特に前作は自分の年間ベスト作だったこともあり、より期待の高まった作品。 でもって、その期待は…

僕が答える君の謎解き 明神凛音は間違えない

僕が答える君の謎解き 明神凛音は間違えない (星海社FICTIONS)作者:紙城 境介星海社Amazon 今年の本ミスに2作目の方がランキングされてて、興味を持った作品。 地元図書館にはこちらしか置いてなかったので、まずは一作目から。 生徒相談室の引きこもり少女…

時空犯

時空犯作者:潮谷 験講談社Amazon 時間ループ物と本格ミステリの融合。 とはいえ、実質はガチガチの本格ミステリ。 ミステリとしてのロジックを構築させる状況として、 時間ループ物が使われているという構造だな。 時間ループ物としては結構ユニークな展開。…