乙一史上初となる「館もの」本格ミステリ、堂々の落成!
--決して解かれえぬ謎と共に炎に包まれ、この世から消え去った「大樹館」。
この館に住み込みの使用人として働く穂村時鳥は、「これから起こる大樹館の破滅の未来」を訴えるおなかの胎児の声を頼りに、その未来を塗り変える推理を繰り返すが--!?
う~ん、なんだか色々と微妙な気がする。
引用したあらすじにあるように、これは特殊設定ミステリ。
……ではあるんだけど、展開とかに影響していることはたしかなんだけど、
ミステリとしての必須要件では全然ないんだよね。
自分の感覚だと、これは「特殊設定小説」ではあるけれど、「特殊設定ミステリ」ではない。
せっかく特殊設定を用いてるのに、それでは勿体ない気がしてしまう。
物理トリックも二つあるんだけど、大がかりな方はイメージがさっぱりわかないし、
それまでの説明と矛盾してる(最後に言い訳が書かれてはいるけど、そりゃ無いっしょ)。
イメージがわかないくらいだから、意外性なんてちっとも覚えない。
それに館ミステリとしての醍醐味だろうに、使い方としては枝葉末節程度の役割しか果たしてない。
もう1個の方もオリジナリティは無いし、細かすぎる解説も本格ミステリとしては無粋。
こういう解説をさせるのも、キャラに全然合ってないし。
フーダニットの方も「死者による殺人」という趣向が成立してると思うのに、
なんか全然外連味の無い描き方になってたし。
ここまで挙げてきたように、もうちょっとポテンシャルはありそうなのに、
いまいち生かし切れてないように思えて、色々と微妙な気がした次第。
というわけで、採点は6点止まり。