新・三つの棺-「幻影の書庫」日記

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兇人邸の殺人

 
さすがに三作連続で傑作とまではいかなかったな。
 
ミステリとしてのロジックは相変わらずちゃんとしてるので、
本格としての精度は高い。
それはそうなんだけど、館の構造があまりにも複雑すぎて、さっぱり頭に入らず、
自分で考えてみようかという気に一切なれないのが難。
なので、解明されても「ふ~ん」という感触になってしまう。
  
(以下、ネタバレにはならないつもりけど、どういうところにネタがあるよってことは
 書いてしまってるので、気にする方はご注意を。なので、少し空けます)
 
 
 
 
ただ、この特殊設定だからこそ成立する首無し死体トリックの新機軸には
感心させられた。これがあるから充分佳作以上のレベルには達していると思う。
 
また、奇をてらったホワイダニットも狙いだろうが、説得力は薄く、不発だったかな。
巨人側のホワイダニットは意外に良かったんだけどね。
 
そこにも通じるわけだけど、この部分の物語性が描かれているのは乙だった。
その分、斑目機関のクリーチャのミステリとしての外連味は弱かったけど。
ただ、それでもロジックにはしっかり組み込まれているし、
クローズド・サークルの必然性にもなってるってとこは、やっぱ凄いか。
 
7点にするつもりだったけど、こうして書いてるうちに、この趣向で三作続けてるとこや、
首無しの新機軸など、改めて考えると評価UPすべきかと思えて、8点に昇格。
 

盆の国

 
時間ループ物。
 
……と書いてはみたものの、本作の本質は全然そんなところには無い。
このジャンルの一つに数えるのは不適切なように思えるくらい。
 
展開は多少慌ただしくはなるものの、お盆の日その一日だけの
出来事として描かれても、充分成立するだろう作品だから。
 
なので、当初期待してた愉しめ方ではなかったものの、
作品としては充分満足できた出来映えだった。
 
少し不思議な話から、少し不穏な空気感が混じってきて、
和物恐怖譚になっていく。
これらがしっかりとまとまってて、納得のいく形に収束する。
全体に流れる多少乾いた哀切感も好感触。
 
画としての味のある雰囲気も、本書では凄くマッチしてて、
これなら上手いと感じられた。
 
一巻完結物の佳作の一つに数えられるのではないだろうか。
 

大きい犬

 
すこし不思議な話。
 
どこかほんわりとした話。
 
まぁなんかちょっと優しくて、
そんないいってことはないんだけど、
なんか読後感は悪くない、そんな感じの話。
 
画は全然うまくはないんだけど、妙な味はあるのかな。
 
ベスト3は順不同で、「大きい犬」「梅・桃・桜」
「ホーライくん」かな。
次点は「クリスマス幸子」で。
 

憂国の空気の世に勇者承ります

先週に続いて、昨日も町田まで歩きing。店舗限定の500円以上で200円Offクーポンを使わなくっちゃってのもあって。というわけで、標準棚では特にこれってのが無かったので、百円棚で揃えてみた。
 

  • 昨日のブックオフ町田旭町店
    1. 憂国のモリアーティ 1 三好輝 少年ジャンプC ¥70
    2. 空気の底 手塚治虫 秋田文庫 ¥70
    3. ルパン三世M 2 深山雪男 アクションC ¥70
    4. 勇者名探偵 1 北欧ゆう ガンガンC ¥70
    5. アリバイ崩し承ります sanorin リュエルC ¥70

1.はモリアーティが主人公という結構とんがったテーマなのに、結構話題だったので、まず一巻読んでみるかと。2.は16編の連作短編シリーズ。対象年齢は高めの作品集のようだ。3.は本編8巻、neo 4巻と出続けてるようなので、そう悪くないんじゃないかという期待で。"M"って何を意味してるんだろうな? 4.はミステリとしてはさほど期待出来ないだろうが、着想はユニーク。「事件の規模がいちいち巨大!!!」という帯の台詞に笑っちゃって。5.は大山誠一郎作品がマンガになっちゃってるよという驚きで。
 

三体Ⅲ 死神永生

 
一作目は奇想SF。二作目は謀略SFミステリ。
そして、この三作目は、原点回帰のハードSF。
 
また一作目はバカSF。二作目はバカミス
そして、この三作目はバカに変わって、ある要素が。
 
そう、それはロマン。ある意味、まさかの真逆の。
 
大真面目にハードSFして、大真面目にロマンする。
 
ああ、それなのに、なんなのよ、やっぱりこのぶっとび感。
三作目に至ってもなお、尽きること無いアイデアの大洪水。
こんだけの飛び幅がありゃ、当然のこと、バカになりそうなのに、
とんでもなくバカな邪悪も描かれているのに、でもでもでもでも、ロマンなんだよ。
 
秘かに想う女性に恒星系を一つプレゼントする、
結婚記念日に二人のために月の土地を買ったことのある、自分のツボは突かれるとはいえ、
そんな直接的なロマンなんて、ただのほんの入り口だぞ。
 
本書でもっと重要なのは、ハードSFとしてのロマン。
センス・オブ・ワンダーを突き詰めたら、その先には絶対ロマンがある。
だからこそ、破滅SFにだってロマンはある。
空間も次元も時間も悠々と越えていく、ああ、嗚呼、もうロマンしか勝たん。
 
ただ、カップリングが違うんじゃないかと、ロマンにもの申したくはなったけどな。
 
(今回は暗号ミステリでもあったので、採点対象で8点付けちゃえ)