新・三つの棺-「幻影の書庫」日記

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スペースシェフシーザー

 
SFとお色気、アクションとユーモアとの融合。
BOICHIの初期作品らしい味わいで、
まぁ普通に楽しめる。
(普通以上とは言い難いけど)
 
著者自身もこんな風に書いてる。
「この漫画は私が好きなものの結晶体です。
科学とSF、美少女とお尻、アクションと料理を全部入れました。」
 
まさしくそんな作品。
BOICHIが好きな方だけどうぞ、ってとこかな。
 

テロール教授の怪しい授業 2巻

 
合宿編のメインは、テロリスト模擬戦。
 
東京オリンピックでどういうテロを引き起こせるか、が課題。
 
うほぉ、こういうのは面白そうだな。やってみたくなる。
 
ただ、最終目的は主義主張をいかにPR出来るかといったもの。
(ここでは「ドーナツ」がその主義主張としてあてがわれてるけど)
 
学生達の案はことごとく粉砕されるが、
一応模範解答も示されて、それなりに納得。
 
まぁ勉強にはなるから、継続してみよう。
実際に役立つ場面は無いだろうけれど。
(まぁあったら怖いわな)
 

テロール教授の怪しい授業 1巻

 
どうしても性善説に立ってしまう、超甘ちゃんで防御力の低い自分にとっては、
身につまされるような話。
 
最初の見開きページのド迫力。
 
そこからもう授業に引き込まれてしまう。
 
まぁ色々と知ることは良いこと、という
知的好奇心で生きてきた自分としては、読んで損は無い作品といったところか。
本書中にも「知ることは力なのでーす!」という言葉があったな。
 
2巻は合宿編のようだ。
 

地上の楽園

 
これが田淵由美子の最後のコミックスということらしい。
 
これまでも何度か書いてきたことだけど、中学時代におとめちっく路線の
りぼん全盛期時代を体験して、読んでいた自分としては
(その頃は男性で少女漫画読んでたこと自体珍しかったとは思うけど)
陸奥A子とか田淵由美子とかいう名前を見ると、心のどこかがきゅんとしちゃう。
 
そんな彼女の最後のコミックスとなれば、読まずにはいられない。
 
そんな作品集なんだけど、なんだか完結感の薄い作品が揃ってしまった。
最後の「あかねたちばな」だけは綺麗に完結してるけれど。
 
作者のあとがによると、15才の秋に描いたのがデビュー作で、
それから50年が経っているとのこと。そうか、そうだよな。
 
このあとがきでは何も触れられてないんだけど(裏表紙の読者代表の文面のみ)
ほんとにこれが最後のコミックスになるんだろうか?
 
勿論もうおとめちっく路線なんてどこにも無くて、とっても大人の作品だから、
決して「読みたい作品」ではなくなってるわけだけど。
それでもやっぱ、なんか青春がまた一つ失われてしまっていくようで、ちょっとさみしい。
もうすぐ還暦のじじいが今更何を言っとるんじゃ、という話だろうけどさ。
 

三文未来の家庭訪問

新しいSF漫画の描き手として、アフタヌーン四季大賞受賞と同時に熱い注目を集めてきた庄司創の短編集。遺伝子デザインが施された人類が暮らす社会を扱ったデビュー作『三文未来の家庭訪問』、宇宙人が用意した「人生完結センター」におけるヒューマンドラマ『辺獄にて』、古代生物をモチーフに信仰と社会を問う『パンサラッサ連れ行く』を収録。練り込まれたストーリーとセンスオブワンダーが、心をたまらなく刺激する!

 
結構難しい話だったな。
 
SFとしてハードなわけじゃないけど、
思弁的にハードって感じだったな。
 
がっつり宗教や哲学を扱ったような「パンサラッサ連れ行く」を除いた二作は、
さらっと読めなくはないんだけど、それだけではすまない重みがある。
 
中でも特に四季大賞受賞の表題作は秀逸。
この一作の中にいったい幾つのテーマを盛り込んでいるやら。
それらが全て無駄にならずに、この作品の中に構成されている。
それでいて、軽みとも思えるくらい、さらりと描かれている。
 
SFという枠で括るよりも、
独自の不思議な設定で物語を綴る作者という感じ。
個人的には、三崎亜記が出てきた時と同じ雰囲気を感じた。