魔偶の如き齎すもの

魔偶の如き齎すもの

魔偶の如き齎すもの

 
刀城言耶シリーズの中短編集。4編が収められているが、
いずれも言耶の若き頃を描いた作品。
表題作で祖父江偲との初めての出逢いも描かれる。
とはいえ、シリーズ読者向けの性格を持った作品なので、
言耶シリーズ初心者には向いてない。
そういうお方は、「首無の如き祟るもの」を含む長編を
数冊堪能された後で、本作に向かわれた方がよろしいかと。
 
「妖服の如き切るもの」
スリードを利かされた後でのこの真相だが、ハウダニットのすっきり感は薄かった。
 
「巫死の如き甦るもの」
シリーズとして既視感を感じる真相。今ひとつ感心できなかった。
 
「獣家の如き吸うもの」
トリックの方向性は大好きなんだけど、前半の描写(急な坂道)と矛盾する。どんなビルやねん。
 
「魔偶の如き齎すもの」
これは傑作。途中の推理展開の一つ一つが、それぞれ「おっ」と思わされて、
とにかくいちいち面白い。それでいて更に驚かされるこの真相なんだもの。
小憎らしいお人よのぉ~。
 
というわけでこれは期待外れかなぁと思っていたら、
最後の表題作で大きく逆転されて、採点は7点確保。
 

ホテルで涙の雫に変身する雪の降るイブの数学頭の女子

「中古コミック10点以上購入で300円引き」のクーポンが今日までだったので、
以下をまとめて購入(コミックスは一律30円引きの値段で記載)。

つい最近図書館で借りたのが、ミステリマガジン2017年7月号。なにせ、その特集が「このミステリコミックが大好き」だったので。
未読作品中、長期連載ではない作品(全3巻以内)で読もうと思ったのが五作品。
というわけで、そのうち在庫があって、許せる価格だった1.~7を購入.。
残念ながら7.の2巻は在庫無しだった。他はこれで完結。
ちなみに最後の五作品目は単巻の「アンダーカレント」で、これはまだ高価だった。
8.~10.は数合わせにお知らせメール設定してた作品から選択。
11.はかなり評判の良いフェチな写真集。
 

イソップの思うつぼ

08/18(日) イオンシネマ新百合ヶ丘にて鑑賞。
 
『カメ止め』の上田慎一郎監督を中心とした3人が共同監督・脚本を務めた作品。
正統な次回作としては、10/18公開予定の「スペシャルアクターズ」になるようだが、
本作も「再び予測不能な物語を紡ぎだしたオリジナル作品」ということだったので、
とりあえず観に行ってみることにした次第。
前知識あまり入れない程度にググった感じだと、評判良くなさそうだったんだけど。
 
で、結果、単独作品として見れば、そんなに悪くもないとは思ったんだけど、
『カメ止め』の印象や期待感を引きずったまま観るのはお薦めできない作品だったな。
 
突っ込みどころは満載だけど、自分が大きく気になったポイントは三点。
 
まず一点目。伏線が無さ過ぎる。
やはり本作も表を描いてから、反転して裏を描くという作品ではあるんだけど、
”大量の伏線とその怒濤の回収”という、あの強烈な快感はまず得られまい。
というか、いくつか細かい点はあったはあったんだけど、
全般的には、伏線なんてあったっけ?、と感じてしまうような作品だった。
 
二点目。都合良過ぎる。
さすがにこれは誰が観ても無理があり過ぎると感じるだろう。
こんな何でもかんでも上手く行くはずないだろと、
おそらく観客の99%は感じるだろうと思う。
 
三点目。イヌが無意味。
これは他の二点と比べれば、キズとは言えないものだろうけど。
映画的には、ウサギとカメとイヌの三つ巴ってつもりみたいだけど、
イヌはただただ傍観者にしか思えない。
これなら最初っからイソップ通りに、ウサギとカメだけで良かったんじゃないかと、
わざわざイヌを付け足した意味がわからなかった。
 
ちなみに朝8:30からの上映だったからとはいえ、公開三日目の日曜日で、
自分を含めて観客が全部で六名って、黒歴史扱いされる作品になっちゃうんだろうか。
ただ、こういう作品を作ろうという意気込みは好きなので、
スペシャルアクターズ」も観に行こうと思ってる。
(「こういう作品」ではないのかもしれないけど、それはそれで)
 

ライオンこわいAI探偵ルパンはスーパーハイテンション

昨日はまだそこまで暑くならない朝7時に家を出て、新百合ヶ丘まで歩いて「イソップの思うつぼ」を鑑賞(感想はまた後日)。
そこから町田へと場所を変えて、本全品20%OFFのブックオフへ。
店頭で500円以上購入で210円OFFのティッシュも配ってたので、それも合わせたら以下の価格で購入できたよ。

1.がようやく購入できて嬉しかった。2.はこわい女は好きではないが、読んでない作品が多そうだったので。3.は購入済みの1,2巻も未読なんだけど、なんとなく自分好きそうだという直感を信じて。4.はとりあえずどんなものか知るために1巻のみ。5.は懐かしの八点鐘をビジュアルで楽しみたくて。6.にも1巻のFile2のような作品があるのなら、全作揃える価値がありそうなので、それを確かめるために。7.は2個目のティッシュで単独購入。一人ごっつは見たことないので、どんなことやってるのかと興味津々。

三体

三体

三体

 
アジア圏作家として初、というより翻訳書として初めて
ヒューゴー賞を受賞した作品。
 
いやあ、期待通りの面白さだった。
 
自分にとっての本書の本質はまさしく奇想SF。希有壮大なバカSF。
 
まずはやはり三体世界の描き方。
そもそも三体問題自体が本作で初めて知ったのだけど、
まさかたかだか三体の相互作用する天体の運動を求めることが不可能だったなんて。
そこから導き出された三体世界の創造のユニークさ。
 
それだけでなく「折りたたみ北京」に収録された傑作短編「円」に
繋がった奇想など、幾つもののアイデアが惜しみなく注ぎ込まれてる。
 
そして、そして、更にそれらを凌駕するような、終盤の奇想。
ミクロスケールをマクロスケールまでとことん拡げてしまうやり口に、
顎があんぐり開いたまんま、閉じるのが困難だったよ。
 
完璧とまでは言えないけども、優れたエンタメ小説にもなってると思う。
 
冒頭の文化大革命という特殊な歴史観が背景にあることで、
本書の底層に流れる終末思想も説得力を帯びてくるし。
(なので、やはりこのシーンは冒頭にあるべきだろう)
 
三部作の残りも更にアイデアがガンガン詰め込まれてるっぽいし、
こりゃ勿論、全部読まなあかんでしょ。