新・三つの棺-「幻影の書庫」日記

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アガサ・クリスティーの名探偵ポワロとマープル 2: NHKアニメ劇場 パディントン発4時50分

 
クリスティがNHKでアニメ化されているなんて知らなかったな。
世界初のアニメ化だったらしい。まぁ、アニメといえば、そりゃそうか。
2004年から2005年にかけて、全39回で放送されたらしい。
 
マープルの甥レイモンドの娘、メイベル・ウエストというオリジナルキャラが、
ポワロの助手も務めていて、両シリーズを結びつける狂言回しの役割のようだ。
 
この「パディントン発4時50分」は、28分番組の全4話で放送されたもの。
 
おそらく原作は未読。クリスティはどれを読んで、どれを読んでいないか、
にわかには区別がつかないんだよなぁ。既読でも記憶の果てだし。
 
さすがに漫画単行本一冊にまとめられているだけあって、
本当の核だけを抜き出している作品になっているのだろうが、
それでもいかにもクリスティらしさを感じることのできる一作。
 
複雑な人間模様で煙に巻いておいて、その実、
いかにシンプルで意外な構図を描いてみせるか。
 
原著の面白さをなんとなく想像させてくれる作品で、
意外に愉しめて良かった。
 

夜と霧の誘拐

 
昨年度の本ミス、このミス、いずれも第2位に輝いた作品。
 
矢吹駆シリーズとしては全10作で構想されていて、これがその8作目。
 
いやあ、さすが。ミステリとしては非常に精緻に構築されていて、
見事な出来映えとは言えるだろう。
本ミス、このミスの順位も、納得のいくものかもしれない。
 
ただ、個人的にこのシリーズに大きく期待しているのは、
シリーズ初期のように、各作品ごとにミステリ・ジャンルをテーマとして捉え、
あくまでミステリの範疇でそこに新機軸を盛り込んでくるところにある。
 
今回は誘拐ミステリがジャンル・テーマとなっているので、
そこに大きな期待を抱いていたのだけど、
そこは期待したほどではなかったかな。
 
たしかに作中でも、さまざまに様相が変わっていって、
交換と絡めて構図がぐるぐると変わっていくあたりの凄みはあったけれど。
 
というわけで、採点としては7点止まりかな。
 
さて、本シリーズのもう一つの特長である、難解至極な哲学論議は、
当然のごとく今回も健在。
特に長い長い4章は、拷問のごとくであったからな。
(正直、読み飛ばしても問題はないところではあるんだけど)
 
終章の哲学論議は、日本人として興味深くは読めたけどね。
 

後宮の結び人 1巻

 
「後宮の女探偵もの」と私が呼んでいるジャンルの、
ど真ん中にピタリと収まる作品。
 
これだけ明確な謎解き構成を取っている作品は、
他に例を見ないほど。
 
推理に特別な知識を用いているものも多いが、
全読者が推理し得るほどの完璧な本格を目指しているような
作品ではないので、そこはまったく欠点ではない。
というより、こういうコメントを付けたくなるくらい、
珍しいほどミステリ性の高い作品と言えるということだ。
 
一話完結の短編形式を取っているのも、
読みやすく、密度も感じられて好印象。
 
これは気持ちの良い作品だった。
 
全2巻とコンパクトサイズなので、購入必須だな。
 

LOST AND WALK

ずっと遠くの星で出会った少女とロボット、死んだ自分の代わりに暮らす自分、不必要と判断された人間ばかりの探査隊、AI婚活が生んだ奇跡、亡き父が愛した妄想… SNS等でちょっと不思議SF作品を発表してきた雉鳥ビューがお贈りする短編オムニバスシリーズ!

 
WebやKindleでは他の作品も読めるようだけど、
出版されているのは、この一冊だけなのかな。
 
裏表紙にはこうある。
「繰り返し何度も読みたくなる
どこか懐かしい手触りの
新鋭・雉鳥ビューが贈るSF短編オムニバス!」
 
この「どこか懐かしい手触り」に繋がるのは、
ある意味、発想の核が古典的であるという点なのかも。
そういう意味での新規性はないんだけど、それでも
どこかしら新しい作品には仕上がっているとは思う。
 
「繰り返し何度も読みたくなる」に繋がるのは、
どの作品も、どこかしらに切なさを残している点なのかも。
 
ベストは、冒頭の「アルキメデスの孤独」。
次点は、エピローグを除く最終話の「不死の魔女」。
微妙な繋がりを持っているのもいいね。
 
もう一、二作は読んでみたい作者かな。
 

藤子・F・不二雄SF短編コンプリート・ワークス 2 ノスタル爺

2023年、TVドラマ化を機に、藤子・F・不二雄のSF短編シリーズ全110作品+αを単行本全10巻に再編集し、装いも新たに刊行! 
「異色SF」シリーズ6冊(第1~6巻)と「少年SF」シリーズ4冊(第7~10巻)に分け、それぞれ概ね発表順に収録します。

 
収録作は以下。
・「イヤな イヤな イヤな奴」
・「劇画・オバQ」
・「休日のガンマン」
・「定年退食」
・「権敷無妾付き」
・「ミラクルマン」
・「ノスタル爺」
・「コロリころげた木の根っ子」
・「間引き」
・「やすらぎの館」
・「箱舟はいっぱい」
 
藤子・F・不二雄のSF短編全作品を、
概ね発表順に全10巻にまとめるという企画の第2弾。
 
この巻には、氏の代表作に推したいような作品は
収録されていないけど、質の高さは間違いなし。
 
この中でのベストは、「イヤな イヤな イヤな奴」。
ツイストのあるオチが、すぱっと決まった作品。
 
第2位は、こうなることはわかっていても、それでもやはり
その哀切さに胸を打たれてしまう「ノスタル爺」。
 
第3位は、ユーモアとペーソスが良い感じに
同居している「定年退食」。