新・三つの棺-「幻影の書庫」日記

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約束のネバーランド 1~20巻(完)

 
ついに読めた(感無量~)。
 
アニメが入り口だったので、まずはそこから。
5巻の脱出までを描いた、シーズン1はやはり傑作だったことを再確認。
スリードと謎解きの話組みや効果も巧みだったし、原作では事後に描かれてた伏線を
ちゃんと作中で展開させていたりと、ミステリ的に昇華されてたのは評価すべき。
最後にイザベラと会わせたところも、アニメの演出の方が勝ちだったのでは。
 
しかし、残り15巻をシーズン2で一気に終わらせたのは、やっぱひどすぎ。
ちょんちょんとつまんで、パッチワークで1枚(1シーズン)に収めた強引な手腕は、
ある意味凄いことかもしらんけど、さすがにやりすぎだったわな。
とはいえ、5巻以降の展開で、シーズン4まで3シーズン引っ張る訴求力はたしかに無かったかも。
 
というわけで、5巻までの神展開はどんなに絶賛しても、絶賛し尽くすことはないので、
その後の原作の話を。
 
やはりそれまでに比べると、ミスリードとか伏線とか謎解きとかの興奮は極端に薄まってる。
その代わりに、アクション要素が強くなってるのが、新しい魅力。
中盤、終盤それぞれのクライマックスである、猟場戦、女王戦の読み心地は抜群。
(女王戦は決着のさせ方が、ちょっとあれだったけどね)
 
全体を通して一番問題だったのは、「約束」のところだったのではないだろうか。
読めない印のあの存在。これが非常にわかりにくかったと思う。
伏線も謎解きも無いようなもんだったし、これが無くても成立すると思う。
 
猟場編の完結までをシーズン2にして、「約束」のところを全てカットして、
結末までをシーズン3でまとめてくれれば、非常に収まりよく、
全体として完璧なアニメシリーズになってたと思うんだけどなぁ。
 

レミニセンス

09/19(日) イオンシネマ新百合ヶ丘にて鑑賞。
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「J・ノーランが仕掛ける映像トリック」とか、
さんざん煽ってるチラシを読んでたから、凄く期待してた作品。
 
記憶に潜入するってこともあって、「インセプション」みたいな作品、
まさしく兄のクリストファー・ノーランっぽい作品だろうと思い込んでしまってた。
 
そういう期待感で見てしまうと、だいぶ裏切られた気分。
 
酩酊感や知的興奮はほとんど感じられない、割と一本調子のサスペンス。
しかも主人公に共感を覚えることのできないまま最後まで進んじゃう。
 
記憶を三次元映像に映し出すガジェットだけは充分活かされてるけど
(真相解明シーンでの、この三次元映像ならではの演出はとても良かった)
これを除けば、SFっぽさ自体がほとんど無いんだよなぁ。
 
人間の記憶なんだから、もっと不確かだろうと思うのに、
完璧な記録映像みたいになってて(しかも主観映像ではなく、客観映像。
キスシーンを思い浮かばせて説明してたけど、それじゃあ不確かさは入るべきでは)
観客の”読み”が入る余地が無いってのも、一本調子を感じさせる要素なんだろうな。
 
また、水没しかけた世界を映し出す、オープンニングの長回しワンショットには
もの凄くワクワクさせられるんだけど、結局この世界観って、
ほとんど活かされてないんだよね。
映像美狙いだけで終わってて、雰囲気として効果的に組み込まれてる感じがしない。
ブレード・ランナー」みたいにしたくて、全然出来ちゃいないってことなのかと。
 
ってなわけで、勝手に期待しちゃうと損する作品なんで、ハードルを下げてご覧ください。
ちょびっとだけSF仕立てのファム・ファタールなサスペンスとしては、そこそこの作品。
 

恐怖の古靴の少女とIKKOの力対決

土曜日は台風到来だったので、家族四人でカードゲーム大会。
日曜日は映画観に、新百合ヶ丘まで往復の歩きing。
今日も今日とて、ブックオフ多摩永山店まで歩きing。
この二日のみで29,574歩。三連休でもほぼ一万歩ペースを確保出来たぞ。
 

和田慎二作品はさほど好みではないのだが、まぁ軽く読めそな短編集なら。
 

1.はバカリズムが500円棚なら無条件に買い。しかも見たことが無いコンビ時代のバカリズムなんだ。2.はほぼ表紙買いだけど、店物のファンタジー(これってジャンル名みたいの無いのかな?)って外れは少ないしってことで。3.は東川作品の漫画化だから、そこそこミステリとして読めるかと。4.は「八つ墓村」と四短編を収録、山前さんの凄くちゃんとした解説付き。5.,6.は有名漫画家達のうろおぼえ画対決。
 

兇人邸の殺人

 
さすがに三作連続で傑作とまではいかなかったな。
 
ミステリとしてのロジックは相変わらずちゃんとしてるので、
本格としての精度は高い。
それはそうなんだけど、館の構造があまりにも複雑すぎて、さっぱり頭に入らず、
自分で考えてみようかという気に一切なれないのが難。
なので、解明されても「ふ~ん」という感触になってしまう。
  
(以下、ネタバレにはならないつもりけど、どういうところにネタがあるよってことは
 書いてしまってるので、気にする方はご注意を。なので、少し空けます)
 
 
 
 
ただ、この特殊設定だからこそ成立する首無し死体トリックの新機軸には
感心させられた。これがあるから充分佳作以上のレベルには達していると思う。
 
また、奇をてらったホワイダニットも狙いだろうが、説得力は薄く、不発だったかな。
巨人側のホワイダニットは意外に良かったんだけどね。
 
そこにも通じるわけだけど、この部分の物語性が描かれているのは乙だった。
その分、斑目機関のクリーチャのミステリとしての外連味は弱かったけど。
ただ、それでもロジックにはしっかり組み込まれているし、
クローズド・サークルの必然性にもなってるってとこは、やっぱ凄いか。
 
7点にするつもりだったけど、こうして書いてるうちに、この趣向で三作続けてるとこや、
首無しの新機軸など、改めて考えると評価UPすべきかと思えて、8点に昇格。
 

盆の国

 
時間ループ物。
 
……と書いてはみたものの、本作の本質は全然そんなところには無い。
このジャンルの一つに数えるのは不適切なように思えるくらい。
 
展開は多少慌ただしくはなるものの、お盆の日その一日だけの
出来事として描かれても、充分成立するだろう作品だから。
 
なので、当初期待してた愉しめ方ではなかったものの、
作品としては充分満足できた出来映えだった。
 
少し不思議な話から、少し不穏な空気感が混じってきて、
和物恐怖譚になっていく。
これらがしっかりとまとまってて、納得のいく形に収束する。
全体に流れる多少乾いた哀切感も好感触。
 
画としての味のある雰囲気も、本書では凄くマッチしてて、
これなら上手いと感じられた。
 
一巻完結物の佳作の一つに数えられるのではないだろうか。