新・三つの棺-「幻影の書庫」日記

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密室黄金時代の殺人 雪の館と六つのトリック

 
これこそミステリのためのミステリ。
密室のための密室。
リアリティなんかくそくらえの、
虚構上等のつっぱりミステリ作品。
 
密室の必然性を無用化させる設定、
「密室が解かれなければ無罪」ってのがいいね。
密室であること自体が、密室の必然性になってしまうわけなので、
もうとやかくなんて言わせない(笑)
 
ただ物理トリックのオンパレードなので、正直さほど好みではなかった。
雪の館とか言いながら、雪密室は一個もないし。
でも、その中では、ドミノのトリックと図書室のトリックは出色かな。
ドミノは絵解き図面見るだけで笑える。
図書室のトリックは物理トリックの無理矢理さが無くて、
本書中では一番シンプルで、一番美しいトリックだと思えた。
 
最後に解明されるトリックはその応用編ではあるのだけど、
こちらは逆に無理が感じられて、感心できなかった。
これに関してはネタバレで語らざるを得ないので、「続きを読む」からで。
 
無理といえば、まぁ面白いことは面白いんだけど、見立ても結構ムリクリ。
第九戒に屁理屈付けるために、長々としゃべって煙に巻こうとしてるけど、
どうあがいても無理があるって。全然納得させてくれてないよってば。
 
まぁ、そんなこんな苦しい点はあるけれど、虚構上等は与(くみ)する主義だし、
トリック二つは感心できたので、採点は7点で。
 
 
 
 
 
 
 
 
さて、このくらい空けて、最後の解明についての不満をネタバレで。
 
合鍵が存在しない証明は現実では難しいはず。
小説の中では簡単に担保されるけど。
その場合の常套手段は、「合鍵が作れないタイプの鍵」って奴。
 
これならば「合鍵が存在しない」がまさしく前提になってるから、
それ以上の追求はされないだろうけど、その場合同じタイプの鍵の方には
合鍵があったかもというこの解明も成立しない。
 
合鍵があれば成立しちゃう事件であったなら、
合鍵の不在証明こそが裁判でも最重要視されただろうことが想像に難くない。
ましてや同タイプの鍵で合鍵のある物が同じ家内にあるのなら。
きっと徹底的に捜査対象とされてたはずで、いろんなルポにも残るだろうし、
そもそもその着目点から、とっくに解かれてるだろと思えちゃう。
 
まぁ、虚構なんだから、目くじら立てるなよ、と自分でも思うけどね。
でも、不満は言いたくはなるので、こうして言ってみた(笑)