黒牢城
4大ミステリランキング初の全制覇、直木賞、山田風太郎賞ダブル受賞と、
究極なくらいの一人勝ちだった本作。
ミステリとしてより以上に、この歴史小説としての価値が
多くの人に認められたのだろうな。
というわけで、今更ですがこれから読もうという人は、事前に
黒田官兵衛有岡城幽閉事件や荒木村重単身脱出などの史実を少し
かじっておくと、もっと愉しめるかもしれません。
一つ一つの章がミステリ短編として優れているかというと、
そこまでではない印象。
ただ、そこから全体としての真相が浮かび上がり、
並行して、史実の謎の解明に繋がる全体を貫く企みが明らかになる。
その二つのいずれもが、壮大なホワイダニットを形成しているというのが、
いかにも現代のミステリならではの重厚感を生み出している要因だと思う。
(前者のホワイに関しては、もう少し伏線を貼っておいて欲しかった気はしたが)
しかもそれらがミステリとしての謎と論理ということだけではなくて、
本作が歴史小説であることの意味付けにもなっているのだ。
これが本作の驚異的な完成度を感じさせる仕組みだと私には思えた。
採点は勿論8点。
ただ本格厨の自分としては、昨年の年間順位ではベスト5外になってしまったな。