円 劉慈欣短篇集
「三体」の作者の短編集。
無尽蔵のアイデアが盛り込まれ、基本的には奇想SF、
ある意味バカSFと評しても良いような「三体」の作者は、
いったいどんな短編を書いているのか。
特に本書中で唯一既読だった表題作(星雲賞受賞作)は、
「三体」の中の一つのアイデアを短編化した、
その奇想SFの極北だっただけに、ますます興味がそそられていた。
デビュー作から年代順に収録された本作だが、
最初の頃は一編に最低一つは特殊なアイデアが盛り込まれ、
奇想の片鱗はあるものの、割とマジメな雰囲気で書かれた作品が多く、
若干期待とは違うかなと思えてきていた。
ところが「詩雲」に至って「来た、来た、来た、来たぁ~っ」と叫ぶ(心の中で)。
これでこそ「三体」の作者。スケールどでかすぎのバカSF。
これはもう納得の出来映え。
というわけでベストは「円」で、第二位が「詩雲」で確定。
第三位は少し悩みどころ。
比較的真面目な路線からは「栄光と夢」「円円のシャボン玉」あたりだけど、
やっぱりバカSF系に自分としては惹かれてしまう。
「月の光」もいいんだけど、後期ばかりに偏ってしまうので、
ここは初期作品系から「繊維」を選択することにしよう。