老神介護
「流浪地球」と対になる、同時発売短編集の一冊。
あちらがロマンに満ちた作品集だったのに対し、
こちらは一転ペーソスに満ち満ちた作品集だと感じられた。
同じ破滅テーマを扱っていても、あちらのパンドラの箱には、
最後に「希望」が残っていたけれど、こちらには「哀しみ」しか無いような。
ユーモアが大きな比重を占める表題作に至っても、
最後はなんかしんみりした話になっちゃうもんなぁ。
しかも不穏な雰囲気を残して。
その不穏な雰囲気が実を結ぶのが、実質続編の「扶養人類」
前半のハードボイルドな雰囲気をすっ飛ばす、
三体世界とか『流浪』収録の「山」のような異世界譚が強烈。
『流浪』収録の「呑食者」と本書の「白亜紀往事」を比較するのも面白い。
蟻歴史の起源と終末を見るかのよう。やはりロマンとペーソスに呼応している。
残る二作のうち「地球大砲」は「彼女の眼を連れて」に繋がることで、
最後にペーソスの余韻が残る作品になった。
で、やはりその「彼女の眼を連れて」だな。売れる作品を意識したものと、
作者自身が告白しているように、あざとい作品ではあるわけだけど、
どうしてもベストはこの作品になってしまうよ。
ベスト3にするなら、やはり最初のアイデアだけで勝ちしかないような
表題作とその続編「扶養人類」だろうな。
この二つの短編集を通じて思ったのは、特に異世界譚に感じられるように、
劉慈欣の本質って、ひょっとしてラファティやラッカーに通じるような、
意外にホラ話作家なんじゃないかってことだったな。