新・三つの棺-「幻影の書庫」日記

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アミュレット・ホテル

警察の介入が一切なく、偽造パスポートでもグレネードランチャーでもルームサービスでお届け可能な犯罪者御用達ホテル。そこでは守るべき2つのルールが存在する。①ホテルに損害を与えない。②ホテルの敷地内で障害・殺人事件を起こさない。そんな絶対的なルールが破られる時、ホテル探偵が独自の捜査で犯人を追い詰める。

 
本格ミステリとしての精度が非常に高い作品集。
 
彼女にしては特殊設定は非常に緩いものではあるけれど、
その分、純粋に本格としての作り込みが割り増しされている印象。
作者の本格力をまざまざと魅せ付けてくれる好編になった。
 
ベストはやはり最初の表題作だろう。
本格としての攻め手が実に豊か。
複層のミスリードで読者を翻弄し、ロジックで導く。
密室物は動機がおざなりになることが多いものだけど、
そこにも意表を突く回答が用意されている。
短編とは思えないくらいの盛り込み具合が素晴らしい。
 
次点は「タイタンの殺人」かな。
ハウが解かれることで、潜んでいたホワイも同時に解き明かされる。
 
残りの二作品も間違いなく秀作。
 
これだけの秀逸な短編が揃ったら、文句なく採点は8点。