本格王2022
珍しくド本格だらけ。
広義のミステリとしか思えなかった道尾秀介「N」収録作
(まぁ一応”本格”の部類には入るかもしれないけどって程度)と、
いつもながらのホワイで魅せる芦沢央「アイランド・キッチン」を除いた
残り四作品が、こりゃ本格以外の何者でもないっしょってばかりの、
ごりごりのド本格。
「ベスト本格」及び「本格王」になったこの22年間の中では、
最も本格度の高い傑作選になっていると思う。
でも、さすがにそんな中でも群を抜いているのが大山誠一郎。
法月の「都市伝説パズル」を読んだときのような、
「まだ、こんな手が残っていたのか」と驚くばかりの
応用範囲の広そうな基本形の提示に唖然としてしまう。
本格の教科書に載せるべきとも思えるような、
そんな文句無しのベストが「カラマーゾフの毒」
残り三作のド本格短編だけど、脳力衰え気味のアラ還世代には
付いていくのが辛くなるくらいの難解さが難点。
その中では最も解き味がシンプルな浅倉秋成「糸の人を探して」を
第二位に選出しよう。
というわけで、いつもの特殊設定でごり押しの方丈貴恵「影を喰うもの」、
解決編のみの穴埋め問題という設定が魅力的なものの、
ちょっと追っていくのが辛くなる森川智喜「フーダニット・レセプション」が
共倒れして、第三位は芦沢央「アイランド・キッチン」で。
採点はこちらも7点。両作に共通な芦沢央作品を除いて、久しぶりに
ちゃんとした異種格闘技戦になって、見所が多かったので、
今年の「ザ・ミステリーズ」と「本格王」は価値ある引き分けってことで。