三体Ⅲ 死神永生
一作目は奇想SF。二作目は謀略SFミステリ。
そして、この三作目は、原点回帰のハードSF。
また一作目はバカSF。二作目はバカミス。
そして、この三作目はバカに変わって、ある要素が。
そう、それはロマン。ある意味、まさかの真逆の。
大真面目にハードSFして、大真面目にロマンする。
ああ、それなのに、なんなのよ、やっぱりこのぶっとび感。
三作目に至ってもなお、尽きること無いアイデアの大洪水。
こんだけの飛び幅がありゃ、当然のこと、バカになりそうなのに、
とんでもなくバカな邪悪も描かれているのに、でもでもでもでも、ロマンなんだよ。
秘かに想う女性に恒星系を一つプレゼントする、
結婚記念日に二人のために月の土地を買ったことのある、自分のツボは突かれるとはいえ、
そんな直接的なロマンなんて、ただのほんの入り口だぞ。
本書でもっと重要なのは、ハードSFとしてのロマン。
センス・オブ・ワンダーを突き詰めたら、その先には絶対ロマンがある。
だからこそ、破滅SFにだってロマンはある。
空間も次元も時間も悠々と越えていく、ああ、嗚呼、もうロマンしか勝たん。
ただ、カップリングが違うんじゃないかと、ロマンにもの申したくはなったけどな。
(今回は暗号ミステリでもあったので、採点対象で8点付けちゃえ)