- 作者:阿津川 辰海
- 発売日: 2019/09/20
- メディア: 文庫
前作の感想で「次作も多分読む」と書いておきながら、遅くなってしまった。
一昨年の本ミス3位で、ミステリファンの世評も高く、結構期待していた作品。
でも、期待のハードルが上がりすぎたせいか、そこまでではなかったな。
途中の怒濤の告発シーンは良かったけど、肝心の真犯人特定推理はあっさり風味。
(ある点に関する動機の矛盾点の指摘には感心させられたけど)
それよりも探偵の苦悩みたいなテーマが、縦糸でくどくどと繰り返されるのが、
ちょっとうるさく感じられてしまった。
「生存と真実、選ぶべきはどっちだ。」という惹句になっているが、
この状況で、真実を選ぶべき必然性が感じられず、展開に納得できなかったのも、
その印象に拍車をかけているように思う。
たまたま侵入者があったことで、抜け道は見つかったけれど、
殺人事件に拘泥していたおかげではないよなぁ。
伏線とかその処理とかは結構上手いと思うので、採点は7点とするが、
2019年の順位表見ながら、だいぶ悩んだ結果、最低一作は見事な作品のある
短編集達の間に入れるのもはばかられ、結局15位という低位置になってしまった。