新・三つの棺-「幻影の書庫」日記

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紅蓮館の殺人

紅蓮館の殺人 (講談社タイガ)

紅蓮館の殺人 (講談社タイガ)

 
前作の感想で「次作も多分読む」と書いておきながら、遅くなってしまった。
一昨年の本ミス3位で、ミステリファンの世評も高く、結構期待していた作品。
 
でも、期待のハードルが上がりすぎたせいか、そこまでではなかったな。
途中の怒濤の告発シーンは良かったけど、肝心の真犯人特定推理はあっさり風味。
(ある点に関する動機の矛盾点の指摘には感心させられたけど)
 
それよりも探偵の苦悩みたいなテーマが、縦糸でくどくどと繰り返されるのが、
ちょっとうるさく感じられてしまった。
 
「生存と真実、選ぶべきはどっちだ。」という惹句になっているが、
この状況で、真実を選ぶべき必然性が感じられず、展開に納得できなかったのも、
その印象に拍車をかけているように思う。
 
たまたま侵入者があったことで、抜け道は見つかったけれど、
殺人事件に拘泥していたおかげではないよなぁ。
 
伏線とかその処理とかは結構上手いと思うので、採点は7点とするが、
2019年の順位表見ながら、だいぶ悩んだ結果、最低一作は見事な作品のある
短編集達の間に入れるのもはばかられ、結局15位という低位置になってしまった。