新・三つの棺-「幻影の書庫」日記

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SFマガジン700 海外篇

これまた結構納得のセレクション。
 
欲を言えば、多くが難解な作品だと思えたので、
もっと明快に愉しめるような作品が数編欲しかったなぁ。
あるいは作品世界に引き込まれて没頭しちゃうような作品が。
なんだか一歩引いたところから、分析しながら眺めるべし、
というような作品ばかりが集まっているという印象だった。
 
そんな中から自分がベストに選ぶのがアーシュラ・K・ル・グィン「孤独」。
作品への没入感が本書の中で最も優れていると思えた作品だった。
 
実はこれは自分としては画期的なことかもしれない。
SF研だった大学時代、ランキング好きな自分としては、
SFは好きな順番に本棚に並べてたんだけど、
ずっと不動の最下位を誇っていたのが「闇の左手」だった。
自分と肌が合わないと思うSF作家を一人挙げよ、と問われたら、
ほぼ間違いなくル・グィンの名前を挙げていただろう。
(ちなみにミステリ作家だったらクロフツを挙げていたんじゃないかと思う)
 
本作品だって非常にル・グィン的な作品だと思うのに
(奇妙で捻くれた形で性的なモチーフを扱ったり、ファンタジーを求めているのか、
 リアルを感じさせようとしてるのか、なんだかあやふやに思えたり、とか)
なんでこんなに惹かれたんだろうな。
分析の出来てない、しかも昔語りで申し訳ない。
 
第2位はジェイムズ・ティプトリー・ジュニア「いっしょに生きよう」
奇妙な形でのファースト・コンタクト物なんだけど、
ファンタジックで、かつグロテスクなラブ・ストーリーにもなっている。
 
第3位はテッド・チャン「息吹」で。
もうテッド・チャンの未読作品が読めさえすれば、それだけで
本としての価値は充分になるからなぁ。
相変わらずどの1編を取っても凄さを感じさせてくれる作者だよ。
も少し質下げてくれていいから(それでも充分凄い作品になりそうだから)
もっと量読ませてくれると嬉しいのになぁ。
 
最初に書いた感想があるので、採点は7点かな。