新・三つの棺-「幻影の書庫」日記

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SFマガジン700 国内篇

ミステリマガジンの方が肩透かしな内容だったので、
あまり期待せずに読んでみたのだけど、これは納得のセレクション。
 
面白味のある作品をバラエティ豊かに選びましたってだけでなく、
ちゃんと珍しげなところを集めてるなという感触がバッチリ。
個人的にも既読作品無し(多分)だったし。いい仕事してるなぁ。
それにまた後書きも素晴らしい。これだけだって読む価値あり。
国内SFの歴史的状況が非常にコンパクトにまとめてあるのだ。
 
また注目点としては、こういうアンソロジーだと、ある程度尺を揃えるものだけど、
その不文律を破るように、全体の1/4〜1/3を占めるような中編が1編収められていること。
 
しかし読んで大納得。
これはたしかに傑作! バランス崩しても入れたい気持ちがよ〜くわかる。
 
というわけで、秋山瑞人「海原の用心棒」が文句無しに本書のベスト。
大作を一冊読み上げたような、深い溜め息の出るどっしりとした読後感。
これ読めただけで涙ちょちょぎれるような(死語)傑作。
 
これまた名作としての格調すら感じさせる貴志祐介「夜の記憶」が第2位。
美しき名品、という感じだなぁ。
SFとしてのアイデア・描き方双方が抜群で、哀愁まで感じさせてくれる。
 
第3位は平井和正「虎は暗闇より」を選択。
ミステリ畑の人間なので、開いた結末ってのが苦手ではあるんだけど。
 
採点は8点。これならSFマガジンの歴史を支え得るアンソロジーだな。