時空争奪: 小林泰三SF傑作選
担当編集者の解説を読むと、企画の始まりは
「SFとミステリで、それぞれ自選短編傑作集をつくりませんか?」
という提案だったらしいが、作者のご逝去も受けて、
もともとの傑作集というコンセプトは変更して、これから小林泰三を
読み始める人への入り口となるような本にするべく編んだものらしい。
というわけで、「小林泰三SF傑作選」という言葉にはなってるものの、
どうしてあの作品が入ってないんだとかは言えなそうだな。
とはいえ、「海を見る人」が入ってないのは、勿体ないよなぁ。
入り口としたい作品集なら、この作品こそ最高にマッチすると思うのに。
難解だったり、爽快とは言えない作品が多いこの傑作集には、
この作品は不可欠だったと思うなぁ。
(版権とかの大人の事情があるのかもしれないけど)
それが無い中でベストを選ぶなら、やはり表題作だな。
河川の成り立ちの問答から、壮大なビジョンに至るバカロジックの凄さ。
宗教に繋げて、宇宙の年齢が数千年だったと言及するところには思わず手を叩いた。
第二位は「クラリッサ殺し」で。レンズマンのことはよく知らないけど、
ミステリ展開から、オマージュに移行して、ラストのメタな一撃にビックリ。
第三位は「完全・犯罪」で。タイム・パラドックスをいじくり倒しながら、
最後はギャグに落ちていく。