新・三つの棺-「幻影の書庫」日記

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酒と勝負する男の物語−途中下車編−

わからない…
 
わからない……
 
何故そんなことになっていたのか?
 
トイレから出たところから記憶が始まっている。そこで電車を待っている。「もう電車ありませんよ」掃除用具を抱えた駅員さんにそう告げられた。
駅を出る。「小田急相模原か」そう心の中で呟く。なんでもない駅。
 
わからなくはないはず。推理力なんて必要ない。
時間的に最寄り駅まで帰れる電車はなかったはず。町田行きの最終電車に乗ったのだろう。でもきっと、膀胱が限界だった。町田まで我慢できずに途中下車した。
きっとそんな平凡なストーリーだったのだろう。乗り過ごしじゃないのは珍しいパターンだったけど、結局そこからのタクシー代、¥5,030。あまり変わり映えはしない。
 
でも、綺麗すっぱりと途切れたように、トイレから出てきたところからしか記憶がない。
 
金曜日の課の新人歓迎会。勿論、一次会はよく覚えている。チューターとして挨拶したことも覚えてる。飲み放題のメニューの中に、八海山があったことも当然。八海山は旨かった。何杯呑んでも旨かった。
そう、二次会は案山子に行った。そこで他の課の新人歓迎会と合流した。ちゃんと覚えてる。案山子では当然ウィスキーを呑んだ。どんなちゃんぽんだろうが、そりゃあ呑む。二次会の途中で、隣に部長が座ってきた。話をした。そう言えば、何か反論してたような気もする……
 
そこで記憶が切れている。次の記憶が始まったのが冒頭の場面。
 
わからない……
 
わからない…
 
私はトイレで何を流してきたのだろう?