新・三つの棺-「幻影の書庫」日記

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酒と勝負する男の物語 −新宿回帰編−

本当に久しぶりに、限界の一線を乗り越えたアラームを感じた。ふわっと頭が軽くなり、視覚に淡いフィルタがかかり、周りの雑音と自分とが遮断される。この状態が訪れると、もうそれが自分の限界なのだ。
「もう駄目だ。限界。先に帰るね」3,000円置いて、二次会の店を出る。
歩いても足元が浮いている感触。非現実の遮蔽膜が自分を包んでいる。おそらく意識の半分は麻痺している……
 
そもそも一次会自体が、酔っぱらうことを前提にしたような飲み会だった。飲み放題3時間コース。しかも本格焼酎飲み放題のオプション付き。3時間とっかえひっかえ焼酎ロックでぐいぐい呑って(いって,もしくは、やって、と読んでください)たら、酔っぱらわない方がどうかしている。こんな飲み会、企画したの誰だよ! あっ、オレだ。
 
……非現実の膜が破れると、一気に現実が溢れ出す。一斉に動き出す人の群れ。アナウンスが新宿を告げている。非現実と現実とがゼリー状に固まったような空気に包まれたまま、人の波に漂い押し出されていく。しかし、、、
「何で出る必要があるんだよ?」
ほ乳類程度の知性はまだ残っていたようだ。両生類や爬虫類の段階までには達していなかった。
降車口から車内に引き返すのと、反対側の乗車口の扉が開くのがほぼ同時。人の波にもまれながらも、なんとか座席を確保することが出来た。幸いにもまだ戻ることの出来る時間帯だったらしい。早く酔いつぶれて助かることもあるのだ。
このままでは引き返す途中もまずい。今度も乗り過ごしたら、もう戻る道はない。最低限の理性を維持するためには、意識が麻痺してしまう時間を作らなければいいのだ。本なんかじゃ駄目だ。たとえばずっと手と頭を動かし続けられたら……
 
その結果、この日かみさんに送り続けたメールの一部をご紹介。
 
23:09 限界を超えて途中で逃げ来ました。かえられるかな
 (文章もろれつが回ってない。最後は漢字変換する気力すらなくしている。で、その結果)
23:56 不思議なことに今新宿にいます なぜ?
 (本当に不思議だ。何故、こうなる?)
0:01 ひょっとしたら俺って時間旅行者なのかも?何故ここに?
 (酔っぱらいのたわごとですな)
0:09 タイムトラベラーです 次は成城学園前
 (以下、数通、実況中継が続くが省略)
0:21 本能ではない 理性の勝利だ。かっかっかっ
 (普通電車に乗り換えた後「乗り換えましょう。あなたの帰巣本能が酒に勝てるかな、勝負」というメールに答えて)
0:28 勝ち!何を勝ちと判断するかによるけどさ 
 (自宅最寄り駅到着。何と吠えようが、明らかに”負け”は”負け”)
 
今度は勝ってやる!