ザ・ベストミステリーズ2020
推理作家協会の年間アンソロジーをずっと読んできていると、
現代の一般ミステリの主流がホワイにあることがよく感じられる。
本書でも秀作と思えるのは、そこに主眼を置いた作品ばかりだったな。
中でもベストは、ダントツで知念実希人「傷の証言」。
この逆転のホワイが生み出す人間ドラマが心に響く。
第二位は櫻田智也「コマチグモ」で。
小さな複数のホワイが繋がり合って、
意外な真相が暴かれていくのが、結構本格的。
第三位は木江恭「さかなの子」で。
これはホワイそのものの意外性もあって、
手がかりなど色々と気を使った作品。
サディスティックな追い込みは自分はあまり好みではなかったが、
そこがいいという人もいるだろう。
協会賞の矢樹純「夫の骨」よりも、この三作が秀逸に思えた。
現代の短編ミステリの匂いを如実に味わえる年間アンソロジー。
軸の無い「本格王」より、よっぽど軸があるようにすら感じられるので、
採点は7点としよう。