新・三つの棺-「幻影の書庫」日記

本格ミステリ書評サイト「幻影の書庫」の旧管理人のブログです。カテゴリー欄の全レビュー索引より、書評、映画評、漫画評、その他評の全一覧リストを見ることが出来ます。同じくカテゴリー欄の年間順位表より各年度の新刊ミステリの個人的ランキングを確認出来ます。

日華ミステリーアンソロジー

 
一編を除いて、シンプルな形式のミステリではない作品ばかりなので、
あんまりミステリーアンソロジーって感じはしないな。
 
陳浩基、陸秋槎という注目されてる中国作家を呼び水として、
若手作家や島荘の秘蔵っ子の顔見世興行みたいな意味合いなんじゃなかろうかと、
ちょっと邪推してたりもするところ。
 
ベストは個人的にはダントツで、林千早「杣径」だな。
おとぎ話が一瞬で現実にすり替わる、映画「ヴィレッジ」みたいな秀作。
 
第二位は唯一真っ正面から本格に取り組んだ、小野家由佳「聞こえなかった銃声」で。
逆に本格としてはシンプルすぎるけどね。この人が秘蔵っ子なのかもと思った次第。
 
第三位は時間SFの陳浩基「ヨルガムンド」で。
 
しかし、こういう自分が選出責任のアンソロージーに自作を載せるときの御大って、
いっつもなんか空気を読まないような作品を挙げてくるのは、なんでなんだろ。
「あえて本格を前提としないと公言して良作を求めた」とは云っても、
ミステリーアンソロジーと銘打っておきながら、これは無いよな。
ミステリ要素、ゼロだもんな。いや、いい作品なんだけどさ。
 
やっぱミステリ感は全体的に薄めではあるので、採点は6点だな。