新・三つの棺-「幻影の書庫」日記

本格ミステリ書評サイト「幻影の書庫」の旧管理人のブログです。カテゴリー欄の全レビュー索引より、書評、映画評、漫画評、その他評の全一覧リストを見ることが出来ます。同じくカテゴリー欄の年間順位表より各年度の新刊ミステリの個人的ランキングを確認出来ます。

ザ・ベストミステリーズ2018

ザ・ベストミステリーズ2018

ザ・ベストミステリーズ2018

読み物として非常に優れた作品が多かった。
たとえば宮部みゆき「虹」なんかは広義の意味でも
”ミステリー”には分類出来ないと思うんだけども、
映画一本見終わったような気にさせてくれる作品である。
 
そんな風に、ドラマ性の高い作品が、珍しいくらいみっちり揃っていた。
ミステリファン向けの選集になってるのが勿体ないくらい、
一般読者にアピールできるアンソロジーになってるんじゃないだろうか。
 
協会賞受賞作である降田天「偽りの春」は、
心理サスペンスの描写のドキドキで読ませる作品。
一つ大きな捻りもあるんだけど。
 
個人的なベストは櫻田智也「火事と標本」。
本格ミステリに仕立てて欲しかったくらいの秀逸なトリック。
 
いつものベスト3選びだと残り二作なんだけど、
どうしても落としたくない作品が揃ってるので、同率で三作品を。
 
芦沢央「ただ、運が悪かっただけ」
心理が若干複雑すぎる嫌いはあるが、この人の短編はいつも良く出来てるなぁ。
柴田よしき「理由(わけ)」
堂々とした題名で、「隠す」というテーマを非常に上手く処理した作品。
里見蘭「彼女の流儀で」
意外に本格みたいなアイデアだった。これで振られたら可哀相。
 
例年以上に、特別なくらい読み物としてのレベルが高く感じられたので、
今年はベスト本格ミステリよりこちらの勝ちだな。勿論、採点は7点。
あちらが「七人の名探偵」から一作も録らなかったのも大きな敗因だと思うけどね。