- 作者: 下村敦史
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2014/08/06
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (24件) を見る
歴代乱歩賞の中でも、間違いなく上位に数えられる作品だろう。
とにかくものすごく良く出来ている。非常に完成度の高い作品。
盲目の主人公と同様に、読者である私も何も見えていなかった。
数々の謎や疑惑に埋もれて、混沌とした闇を歩いている感覚。
それらが謎解きに入った途端に、次々に光で照らされる。
闇が見事に振り払われていく。
健常者の目となって全てを見渡すことが出来るようになる。
この感覚が素晴らしい。
伏線も縦横に張り巡らされているのだ。
整合性良くきっちりと構成されていたことがよくわかる。
しかもきちんとストーリーとして機能している。
感動にも繋がり、読後感の良さまで引き出してくれる。
ミステリと小説の両面から心地よさを感じたまま、本を閉じることが出来る。
嘘の香りが読中と読後で、こんなにも変わることを、
是非味わう価値があるだろう。
乱歩賞としては珍しく、8点を進呈したい。