新・三つの棺-「幻影の書庫」日記

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世にも奇妙な物語(現実版「お召し」)

今、「不思議の扉 午後の教室」を読んでいる。
この中に小松左京「お召し」が収録されている。ある日全ての大人が忽然と消え去るところから始まる物語。
周りの人々が突然消え去る。破滅型SFを代表として、こんな設定はたしかに時々読むけれど、この「お召し」を読んで、蘇ってきた記憶がある。こんな経験を自分もしたことがある!
 
自分の周りから全ての人が消える。
そう言えば、あの世界から自分は抜け出せたのだろうか?
抜け出せないまま、まだここにいるのでは? 孤独を紛らわすための幻影を今も見続けているのかも?
 
周りがみんな消えてしまった? いいえ、本当に消えたのは「貴方」の方なのかもしれませんよ。
♪チャララララ チャララララ チャララチャッチャ チャラララララー
 
あれは数人で一緒に海外出張に行ったときだった。
当時、共同で仕事をしていた、米国シリコンバレーの某企業。
 
会議室でのミーティング中。
お腹を壊してた私は、一人トイレの個室に籠もっていた。
そして、数分後戻った会議室。
 
…… そこには誰もいなかった ……
 
おかしい。会議室を出て、フロアを見渡しても人っ子一人いやしない。
 
今さっきまで人がいた気配は残っている。
それでも確実に「今、人のいる気配」は全くないのだ。
有名なマリー・セレスト号のように。
 
比較的昼近かったため、2フロア上の食堂に急いで行ってみた。
仲いい面子だから、さすがに置いていかれることはないと思ったんだけど、念のため。
でも、案の定、やはりそこにもいない。
 
というより、驚くべきことに、食堂にも人っ子一人いないのだ。
その時間ならもうそこそこ賑わっているはずなのに。食堂の従業員すらいない。
 
…… 自分以外の全ての人が消えた世界 ……
 
困惑したまま、仕方なく会議室に戻る。他に術(すべ)はなかった。
 
まさか。
 
ドッキリじゃないよね。
日本ではもう素人相手のドッキリ番組なんかやっちゃないけど、米国だからな。
でも、さすがにこんな真面目な会議中にそんなことは考えられない。
ここまで来てもプラカード持って飛び出てくる人もいないし。
 
本当にSFの世界に紛れ込んでしまった自分。
 
ひょっとしたらもう、この世界には自分しかいないのか?
 
 
 
 
 
 
その時、どたどたと大勢の人が戻ってくる気配が。
会議室の扉が開く。
 
「いやあ、ちょうど避難訓練の日だったんだって」
 
 
本当の出来事です。