新・三つの棺-「幻影の書庫」日記

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ラーメンズ第14回公演『STUDY』

 
収録コントは以下。
・study
・ホコサキ
・QA
・科学の子
地球の歩き方
・いろいろマン
・金部
 
ちょっとおバカ系な前作とは打って変わって、
タイトルからも連想されるように、思考系のコントに戻ってきてくれた。
(「いろいろマン」という例外はあるけど)
 
やはり、作り込まれた言葉のネタ。
これこそラーメンズの(いや、小林賢太郎の)真髄だろう。
これほどに言葉で遊び尽くす芸人は他にはいるまい。
 
というわけでベストは「ホコサキ」。
同じ流れで第二位は「QA」。
 
残るベスト3の一角は「金部」かなぁ。
ただ、公演中で張った伏線を最後のコントで回収する、
という趣向が無かったのが残念だな。
 
次点として、もう一作挙げておきたいのが「地球の歩き方」。
言葉を切り取って笑いに変える着想が、とにかく秀逸。
 

ラーメンズ第13回公演『CLASSIC』

 
収録コントは以下。
・ベルボーイのホテル旅館化計画
マリコマリオ
・受験
・ダメ人間
ギリジンツーリスト
・バニーボーイ
・1313
・帝王閣ホテル応援歌
・おまけ
 
これまでにないくらい全体の統一感が高まった公演。
なにしろ場所が「帝王閣ホテル」という一つの舞台に限定されている。
 
それだけではなく、全体の雰囲気が。
Wikiによると、今回のタイトルは「脱典型を目指すラーメンズの典型を出す」
というテーマらしいが、それよりも前公演の「ATOM」がメッセージ性が強かったため、
中身が何も無いような作品作りを目指した、というところが非常に大きそうだ。
 
「過去、最バカ」という製作メモがあったように、
普段の作り込まれたネタとは違って、二人のバカ話の応酬という雰囲気のコントが主。
 
というわけで、ネタの作り込みが好きな自分としては、
あまり好きな公演とは言えないものだった。
 
このバカ話の応酬という面では、ベストは「バニーボーイ」になるな、やっぱり。
特に「おまけ」に入ってる方は、片桐仁自身がツボにはまってて、
観ているこっちも笑うしかなくて、最高。
 
次点は「ダメ人間」で。今回も選択は2本で。
 
ところで、マジックとガンダムのオタクのコントが収録されてないのは残念。
特にガンダムネタは観たかったなぁ。著作権的に省かれたんだろうか。
 

探偵ゼノと7つの殺人密室 8巻(完)

 
というわけで最終巻だというのに、
殺人密室二つを詰め込んでいて、とっても窮屈。
 
過去の決着も付けなきゃってこともあるし、
こんな尺では見事な出来映えは期待出来ないよね。
 
六つ目の「要塞島」編は、きっかけはわかりやすいが、
ハウダニットの原理やそれが起こす事象は面白く、
一応推理の根拠もあるしってことで比較的ましな出来かも。
 
ということで、いよいよ「最後の密室」編。
ちらっと最後の期待をもって臨んだんだけど……
 
全然密室じゃないやん! リモコンでって一体何だよ!
 
過去の経緯に関してはそれなりにまとめて終えられてはいるけどね。
 
結局最後まで雰囲気の皮を被っただけの、
勘違いミステリの筋悪作品だったな。
人間嘘発見器という設定を思い出したように最後使ってきたけれど、
単に使ったというだけ。全く活かすことの無いままだったなぁ。
 

探偵ゼノと7つの殺人密室 7巻

 
AI暴走を扱う「顔のない悪魔」編。
当然5つめの殺人密室だと思ってたら、こんなことに。
全体的に悪くはないけど、ってところだなぁ。
証拠の見せ場を作ってはあるけど、
推理の根拠は特に無いんだよなぁ。
 
残り1.5冊で、殺人密室三つ。窮屈だなぁ。
ということで、過去の真相を見せながらという演出有りではあるけれど、
あっさりとハウダニットだけの「幻影の劇場」編。
これまでの中ではハウの独創性はそれなりにあるかもしれないけど。
 
おまけみたいな「赤錆通りの銃声」編も
証拠を出すシーンはあっても、推理の根拠が無いのは同じ。
 

ラザロの迷宮

 
なるほど、こういうやり方か。
 
以下の感想ですが、勿論、明確には書かないですけど、
勘の良い方には、充分読めてしまう部分があるかもしれません。
これから読もうと思っていらっしゃる方は、
以下は読まずに本書に向かわれた方が良いと忠告させていただきます。
 
本書の基本的な構造は、実は作者の発明ではない。
ミステリ映画好きであれば、観たことがある人も多いだろう
初心者向けミステリ講座(映像編)にも選んでいる「アイデンティティ」である。
 
ある意味、結構そのままと言ってもいいくらいの相似形。
犯人の設定まで含めて。
 
それなのに、なかなかそうとは気付かせない。
それはきっとあらかじめミスリードが仕込まれているから。
 
あからさまかどうか逡巡するくらいに仕込まれたコレが上手く機能して、
その先への読者の思考を遮断する役割を果たしているんじゃないかと思う。
 
だからこそ、P377の逆転の一言が、どんでん返しとして響くのだ。
 
このやり方が上手かった。更にここにとどまらず、
最後のどんでん返しまでバッチリと決めてくれたおかげで、
パクりとは言えないオリジナリティを充分生み出すことに成功している。
 
なかなか見事なお手並みだろう。採点は8点とする。