永劫館超連続殺人事件 魔女はＸと死ぬことにした
おお、これは結構な掘り出し物。
本書の謳い文句がこれ。
『館』x『密室』x『タイムループ』の三重奏(トリプル)本格ミステリ。
このうち『密室』物としては、正直イマイチ。
たいしたハウダニットではない。まぁオマケ程度と考えた方が良いかと。
『館』物というか、嵐の山荘のようなクローズド・サークルとしても
あんまし意味は無い。そんなに連続殺人ってわけじゃないし。
但し、本書ではそういう意味合いについては触れられてないものの、
これが目くらましとして機能してるってのは、地味に凄いポイント。
（橋の落下ってクローズド・サークルにするための恒例行事なので、
読者はいつものことと全然気にしないと思うんだけど、実はこれが
タイムループのもう一つの構図を示す重要な手がかりだったりする）
そして最後の『タイムループ』物としてだけど、本書はここが傑作。
特殊設定ミステリとして、これだけの構図を見せてくれたら、もう大満足。
しかもこれって、本書中では明記されてはいないものの、
明らかにシュレディンガーの猫をモチーフにしている作品。
ミステリでもこれを扱おうとしている作品は稀に見かけるけど、
麻耶雄嵩の「収束」以外に成功作はこれまで無かった（※諸説あります）。
ようやく本書でそれに続く作品を見つけることができた。
採点は８点。今年のベスト５入りは確実だな。
