恐ろしく奇妙な夜
国書刊行会の世界探偵小説全集の中でも、最大の収穫の一つであることは間違いない
(賛否両論はあるにせよ)「赤い右手」の作者、ジョエル・タウンズリー・ロジャーズの中短編集。
勿論、私の乏しい長期的記憶槽では、内容は全く覚えられてないのだけど、
これが本当に計算尽くで書かれているのか、疑問に思えた記憶がそこはかとなくある。
ただ、この作品集を読んで、やはりあれは計算尽くなんだと納得できた。
このわずか六編の中でも、読者にミスリードを仕掛けたり、
堂々過ぎるほどにあからさまに思えたり、妙な酩酊感を覚えてしまった。
やはり独特な雰囲気を持った作品を書く作者なのだな。
ベストはシンプルな明解さが光る「わたしはふたつの死に憑かれ」で。
第二位はミスリードの味わいが独特な「人形は死を告げる」で。
第三位は上記の妙な酩酊感が一番味濃い「つなわたりの密室」で。
採点は8点。