新・三つの棺-「幻影の書庫」日記

本格ミステリ書評サイト「幻影の書庫」の旧管理人のブログです。カテゴリー欄の全レビュー索引より、書評、映画評、漫画評、その他評の全一覧リストを見ることが出来ます。同じくカテゴリー欄の年間順位表より各年度の新刊ミステリの個人的ランキングを確認出来ます。

魔性(ばるぼら&I.L)

 
先日「I・L(アイエル)」の感想上げたばかりだけど、
よく考えたら、こっちに丸々含まれてたよ。
 
なので、こちらでは「ばるぼら」の方の感想のみ。
 
こちらは割と首尾一貫している。
ただ前半と後半では、だいぶカラーが違う。
 
前半は主人公と様々な女達(とはいえむしろ人間は少数派)との
奇妙な恋愛関係を描いた作品達で、短編集としての様相。
 
ところがターニングポイントとなる第6章「黒い破戒者」を経て、
第7章「狼は鎖もて繋げ」以降は、ばるぼらを巡る長編という様相を示す。
 
作品としての結構はしっかりしてるので、「I・L(アイエル)」のような
失敗作感は少なく、まとまりの良い作品に思える。
エンタメ性としては、あちらの方が上ではあるのだけど。
 
ただミューズ(詩神)という設定と、黒魔術との取り合わせは合わなく感じられた。
具体的な呪物とかじゃなくて、怪しい雰囲気だけに収めて欲しかったな。
”芸術=狂気”というところを象徴しているのだろうとは思うものの。
 
短編集とは違うので、一番好きな章だけを選ぶとすれば、
第5章「砂丘の悪魔」だな。