- 作者: 有栖川有栖
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2019/09/20
- メディア: 新書
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三本の中編でボーナストラック的な短編二作を挟んだ形式。
冒頭の「船長が死んだ夜」は新本格30周年を飾る屈指の名アンソロジー
「7人の名探偵」の中でも、迷わずベストに選んだほどの名品。
何気ない手がかりのWHYから導き出される、論理のアクロバットに酔い痴れる。
有栖全短編のベスト選びをするなら、そのトップ5には必ず入れるだろうと思う。
そのベスト選びの不動の一位に迷わず選ぶのが「スイス時計の謎」。
表題作はその姉妹編という位置づけとされてたため、
また、シリーズ初の倒叙形式という触れ込みも相まって、
大いに期待させられたのだが、その期待はさほど満たされなかった。
動機がわかり辛いため、後出しでくだくだ説明させるより、
独白で描いといた方がましだろうという、消極的な手法の必然性かと思えた。
犯人当てにするほどの魅力は無いから、逮捕シーンのサスペンスで見せた方がまし、
という判断も働いたのかも…… うがち過ぎですね、すみません。
とっかかりのホワイ(何故洗濯機を開けたのか?)は良かったけど。
巻末の「トロッコの行方」は、肝心のトロッコ問題との関連性が薄かった。
ミステリに入る前段階の選択肢なんだものなぁ。
それをベースにトロッコの行方を比喩的に使われても、ピンとこない。
ただ作者が意図した急転直下の真相解明の描き方は、心地良かった。
次回は是非、見知らぬデブをたたき落とす方のトロッコ問題を
ミステリの方に絡めた作品を読ませて欲しいなぁ。
船長が収録されてるから7点は確保だけど、他はさほど強くない。