- 作者: 日本推理作家協会
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2015/05/20
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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その中でも、この二作が群を抜いている。
芦沢央「許されようとは思いません」
下村敦史「死は朝、羽ばたく」
いずれもホワイダニット分野の傑作短編。
どちらが年間ベスト作品に選ばれても当然と納得できる短編だ。
特に、その逆説的なロジックが読者の想像を明らかに上回る、
芦沢作品の方を私は本年度のベストに推したい。
日本推理作家協会のHPを見に行ったら、今回は受賞作無しだったらしいが、
この出来映えであったら、是非ともどちらかに授賞して欲しかったなぁ。
さすがにこの出来の良さは無視できなかったのか、
「ベスト本格ミステリ2015」にもこの二作のみ重複収録されているが、
「本格」に分類するのはちょっとずるい気はするかな。
(それぞれに巧みに伏線は張ってあるとは言えるけど)
残るベスト3の一角も迷わず、両角長彦「不可触」に決定。
サスペンスの描き方から、これしかないというホワットダニットに
決着するプロットが実に巧み。真実の暴き方の外連味もとてもいい。
これら三作以外にも、見えていたつもりだった世界と
真実が全く違う世界だったことがわかるというような、
そういう構造の作品がとても多く、全体のカラーが整っている感じ。
綺麗な転換を見せてくれる加納朋子「座敷童と兎と亀と」と、
ド汚い転換に唖然とする葉真中顕「カレーの女神様」との間に、
歌野晶午「散る花、咲く花」や白河三兎「自作自演のミルフィーユ」や
若竹七海「ゴブリンシャークの目」などが、グラディエーションを
描いている感じか。
年間アンソロジーなのに、そういう統一感も感じられて秀逸。
文句なく8点進呈させて欲しい。