新・三つの棺-「幻影の書庫」日記

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ミステリ・ウィークエンド

原書房様からの頂き物。いつもありがとうございます。

ミステリ・ウィークエンド (ヴィンテージ・ミステリ・シリーズ)

ミステリ・ウィークエンド (ヴィンテージ・ミステリ・シリーズ)

パーシヴァル・ワイルドの処女長編。
あの「検死審問―インクエスト」も同年の発表らしい。
なるほどのユニークなユーモア感と形式の面白さの両方を兼ね備えた作品で、
本格ミステリとしても充分に愉しい佳作。
 
ミステリ・ウィークエンドとは、まぁ今で言うミステリーツアーなわけで、
だから、はなっから見知らぬ者同士。レッド・ヘリングがうじゃうじゃ
泳いでるというか、みんな怪しい人ばかり。
スラップスティックみたいな怪しい趣味に怪しい行動が展開されていく。
 
それで舞台がお決まりのクローズド・サークルになって、
密室殺人に加えて、死体消失&入れ替わりというバリエーションまでかましながら、
でもって、複数の書き手による手記で話はリレーされていく、
という、ガジェットてんこ盛りの本格ミステリ
 
これらの伏線がみんな収まるところに収まって、
そこはかとないユーモア感さえ醸し出してる真相に、
見事に収束していく解決編はとてもお見事。
しっかりと本格の地に足を付けてるのが、やはり「検死審問」の作者。
 
ボーナストラックの短編三種も、読み応え高い「自由へ至る道」、
コントみたいなショート・ショート「証人」に、
ユーモア抜群の「P・モーランの観察術」と、
それぞれ独自の愉しさ溢れるコレクション。
 
文句なく8点の出来映えだろう。