さすがの作品。星雲賞も納得。とても濃く重い。重いながらも軽快。SF漫画という”ジャンル”で語るだけの作品では決してない。
元々本質的にはSFはジャンルとして懐が広いはずなのだ。同じマニア向けのジャンルであっても、ミステリの方がより一般的な読者を獲得し、SFはごく一部のマニアの間だけで閉じた世界を形成しているのが不思議なほど。ジャンルが表現できる範囲からすれば、正直むしろ逆であっていいはずだと思うのだが。
SFは全ての文学を内包し得る。本書を読めばそれがよくわかる。
恋愛物であり、青春物であり、社会物であり、家族物であり、哲学であり、推理物であり、アクションであり、ユーモアであり、ペーソスであり、等々人間ドラマとしてのあらゆる要素を味わえてしまえるかのよう。
哲学的な要素が若干色濃く過ぎて難解に思える部分もあるが、それも含めてこれはやはり傑作。素晴らしい作品だった。SF心を持つ全ての人にお勧め。