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リッターあたりの致死率は THANATOS (講談社ノベルス)
- 作者: 汀こるもの
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2009/04/08
- メディア: 新書
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そこらのミステリでいい人ならば、わざわざ本書を手にする必要はない。そこらのミステリを読んで満足していればいいだろう。わざわざツンデレ系のメイド喫茶行って冷たく当たられる必要性など皆無なのと同じように。しかもひょっとすると99%のツンに1%のデレ。でも、果たしてデレにのみ価値があるものか、ツンの技術こそが人を惹き付けるのではないか(と、熱く語るようなことではないが)。
ミステリにおいてのツンの技術の最たるものこそ、アンチ・ミステリではないのか。求めるものあらば、それはここにあるかもしれない。
しかしながら本書はデビュー作と同じように、本格ミステリである。真っ当にミステリしているのだが、当然の如く(と言っていいのかどうか)真っ当なミステリでは終わらないだけ。でも、少なくとも本格の皮をかぶっている。皮かむったその中にいるものが、狼なのか、鼠一匹なのか、童貞の○○○なのか、そういう違いなだけだ。さて、本書はど〜れだ?
しかもガジェットの本格であったデビュー作に対し、本作はロジックの本格。このところ、ミステリのロジックに対し、認識を新しくしろと突きつけるような作品が発生しているような気がしている。代表的な作品は「青銅の悲劇」だろう。ある意味、本書もまたその系列につながる作品かもしれない(ただ、それにはも少しロジックの強度が欲しいところだったが)。極限に持ち上げた先に何があるのか見極めようとするのと、絞首台の落とし戸を取っ払うようなのと、ベクトルは真逆なのかもしれないけれどね。
さて魔道を歩むものが辿り着く先は、本当にアンチ・ミステリの深淵なのか、それともあるいは一周か二周か廻ってパラダイスの恍惚なのかも?