ディオゲネス変奏曲

ディオゲネス変奏曲 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

ディオゲネス変奏曲 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

 
自分の現代海外ミステリ・ベスト10に入る、傑作本格ミステリ「13・67」を書いた
陳浩基の自薦短編集と云うことで、ド本格に満ちてるかと期待したんだけど、全然そうではなかった。
 
悲しいことに作者あとがきでも、枠の決まった範囲での犯人当てには興味無いみたいなことが書いてある。
実はそういう書き手だったのか。
 
たしかに本書の収録作で、広義に本格ミステリと解釈できる作品は、
「サンタクロース殺し」「作家デビュー殺人事件」「カーラ星第九号事件」
「悪魔団殺(怪)人事件」「見えないX」と、それなりの数は揃ってるんだけど、
いずれも真っ当な(というか直球の)本格ミステリではないものばかり。
 
パロディだったり、メタミステリっぽかったり、後期クイーン的問題だったり、
いずれも本格ミステリ批評を内包したような作品ばかり。
 
ただ、その批評精神が最高純度に発揮されると、
本格ミステリの枠にメスを入れて、そこから逃れようとすることで、
逆に本格ミステリとして研ぎ澄まされた、とんがった作品も生まれ得る。
それが本書中随一の傑作「見えないX」であるわけだ。
 
ちなみに第二位は後期クイーン的問題を扱った「カーラ星第九号事件」。
オチはSF短編の超常套手段(いったい何作読んだことか)なんだけどね。
第三位はまるでO・ヘンリーみたいな「サンタクロース殺し」で。
非本格から一作選ぶなら、やはり「藍を見つめる藍」だろうな。
構図が結構複雑だから、謎解きに若干わかり辛さを感じたのが、選外理由。
この作品以外のスリラーは、あまり出来が良くなかった。平凡な発想にとどまっている。
SFでは第二位の作品を除いたら、「時は金なり」かな。
 
期待感とはだいぶ違ってたけれど、まぁバラエティに富んだ作品集ではあったし、
とにかく「見えないX」が読めたので、海外物へのいつものおまけで採点は8点。
この一作が無かったら、絶対7点どまりだったんだけどね。