新・三つの棺-「幻影の書庫」日記

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ロスト・ラッド・ロンドン 3巻(完)

 
特にストーリー的に素晴らしいということはないのだけど、
最後までぶれることなく、この個性ある雰囲気が貫かれていた。
 
腰砕けになることなく、しっかりとクライム・ストーリーとして
完結してくれたので、文句無し。
 
1~2巻の感想の繰り返しになってしまうが、
独特な雰囲気を持った、唯一無二の個性を放つ絵柄が魅力的。
 
日本のコミックスには無いタイプの画風にマッチした
キャラクタ造形や会話の進め方が、まるで海外映画のようだ。
 
こういう体験はなかなか出来ないので、
この作家の他の作品も是非とも読んでみたくなる。
 
この雰囲気に浸ること自体が心地良いのだから、
外れるということは無いだろう。 
 

嘘喰いと賭郎立会人

時は『嘘喰い』完結より少し遡り、斑目貘がお屋形様に成った直後へ。
親睦会と称し夜行妃古壱立会人を部屋に呼び出し語らせたのは、若かりし日の夜行立会人初の賭郎立会。
回想の最中ギャンブラーに憑依する貘、奇妙な追憶の旅が始まる──。

 
いやあ、久々に嘘喰いが読めて嬉しい。
 
いつも通り、子供の遊びをベースにして、
命がけのギャンブルに仕立て上げ、
その上で読者の予想を超える逆転劇を魅せてくれる。
1巻で完結しているのもいい。
 
今回のゲームはカンダタ危機一発。
そう、元々は黒ひげの船長のやつ。
(ちなみに豆知識だけど、大元は船長を助け出すって意味で、
 飛ばした方が勝ちってルールだったらしいぞ)
 
これがどう金と命のリスクを引き換えにするギャンブルに
化けるのか、そして勿論、それがどんだけエグいのかってのは、
いつもながらの嘘喰いで満足。
 
逆転劇としてはあっさり気味だけど、1巻完結だし、
このくらいで丁度いいのかな。
 
このフォーマットなら続ける余地がいくらでもあるし、
そういう雰囲気のラストだし、もっと読ませて欲しいなぁ。
 

推理の時間です

あなたにはこの謎が解けるか――。
法月綸太郎と方丈貴恵がフーダニットで、我孫子武丸田中啓文ホワイダニットで、北山猛邦と伊吹亜門がハウダニットで、読者皆様に挑戦します。

 
三分野で六人の推理作家による「読者への挑戦状」対決!
互いの問題を推理し合うという「推理編」の趣向が秀逸だった。
ちなみにスーパーバイザーのノリリンは全部に挑戦(結構豪快に外してたりしてて乙)。
 
タイマン勝負の形式になってるので、いつものベスト3ではなく、
それぞれの分野で勝者を選ぶ形にしようと思う。
 
フーダニット編では、ちょっと難度は高すぎるけれど、
王道の犯人当ての方丈貴恵の勝利。推理編の緻密度も良かった。
ノリリンは若干簡単すぎたのと、本人の反省にもあるように、
出題意図とは真逆の動機が成立してしまうのは、やはり疵かと思う。
 
ホワイダニット編は、やはり挑戦状形式には向かないというのを
改めて示したような形になってしまったと思う。そりゃそうだよなぁ。
その中では推理で導けるようになんとか頑張った我孫子武丸の圧勝。
 
ハウダニット編はいずれも秀作で、三分野の中で最も充実したパートになった。
ハウとしてはこちらが上だと思うし、ハウの中に別の謎をも内包した北山猛邦
非常に良かったんだけど、更にそれに加えて思い及ばぬようなホワイをも
炸裂させてくれた伊吹亜門の方を勝者としたい。本書全体でもこれがベスト。
 
こういう形式で、推理編もあってと、この趣向だけでも8点進呈!
 

ラーメンズ第14回公演『STUDY』

 
収録コントは以下。
・study
・ホコサキ
・QA
・科学の子
地球の歩き方
・いろいろマン
・金部
 
ちょっとおバカ系な前作とは打って変わって、
タイトルからも連想されるように、思考系のコントに戻ってきてくれた。
(「いろいろマン」という例外はあるけど)
 
やはり、作り込まれた言葉のネタ。
これこそラーメンズの(いや、小林賢太郎の)真髄だろう。
これほどに言葉で遊び尽くす芸人は他にはいるまい。
 
というわけでベストは「ホコサキ」。
同じ流れで第二位は「QA」。
 
残るベスト3の一角は「金部」かなぁ。
ただ、公演中で張った伏線を最後のコントで回収する、
という趣向が無かったのが残念だな。
 
次点として、もう一作挙げておきたいのが「地球の歩き方」。
言葉を切り取って笑いに変える着想が、とにかく秀逸。
 

ラーメンズ第13回公演『CLASSIC』

 
収録コントは以下。
・ベルボーイのホテル旅館化計画
マリコマリオ
・受験
・ダメ人間
ギリジンツーリスト
・バニーボーイ
・1313
・帝王閣ホテル応援歌
・おまけ
 
これまでにないくらい全体の統一感が高まった公演。
なにしろ場所が「帝王閣ホテル」という一つの舞台に限定されている。
 
それだけではなく、全体の雰囲気が。
Wikiによると、今回のタイトルは「脱典型を目指すラーメンズの典型を出す」
というテーマらしいが、それよりも前公演の「ATOM」がメッセージ性が強かったため、
中身が何も無いような作品作りを目指した、というところが非常に大きそうだ。
 
「過去、最バカ」という製作メモがあったように、
普段の作り込まれたネタとは違って、二人のバカ話の応酬という雰囲気のコントが主。
 
というわけで、ネタの作り込みが好きな自分としては、
あまり好きな公演とは言えないものだった。
 
このバカ話の応酬という面では、ベストは「バニーボーイ」になるな、やっぱり。
特に「おまけ」に入ってる方は、片桐仁自身がツボにはまってて、
観ているこっちも笑うしかなくて、最高。
 
次点は「ダメ人間」で。今回も選択は2本で。
 
ところで、マジックとガンダムのオタクのコントが収録されてないのは残念。
特にガンダムネタは観たかったなぁ。著作権的に省かれたんだろうか。