新・三つの棺-「幻影の書庫」日記

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密室ミステリーアンソロジー『密室大全』

 
収録作は以下。
「密室龍宮城」青柳碧人
「佳也子の屋根に雪ふりつむ」大山誠一郎
「ある映画の記憶」恩田陸
「歪んだ箱」貴志祐介
「要介護探偵の冒険」中山七里
霧ヶ峰涼の屋上密室」東川篤哉
「密室荘」麻耶雄嵩
「招き猫対密室」若竹七海
 
比較的新しめ('90年代後半以降)の作品から、
バラエティ感あるセレクトになってる気がする。
 
近年の密室アンソロジーだと、照れがあるかのように、
斜め視点から選んだような作品が多いのが特徴だが(特に評論家の選出だと)
比較的ゴリゴリの密室もちゃんと選出されていて、好感は持てる。
 
まぁ斜め視点の極端な例が「密室荘」で、いかにも千街氏選なんだけど、
こういうアンソロジーの中では浮いてしまってるのも事実。
麻耶くんラブな自分が補足しておくと、これは”解決のないミステリ”という
究極のアンチミステリだけで成立させた「メルカトルかく語りき」という
本格のエッジを見せつける超絶的な短編集の一編。いかにも評論家冥利な作品なんだけど、
この作品集を読んでない読者に、これ一編だけを提示してもわかんないってば、千街さん。
 
ベストは勿論「佳也子の屋根に雪ふりつむ」大山誠一郎で決まり。
「不可能犯罪コレクション」で初読の際に書いたように
捨てトリックでさえ奇想を展開させ、無茶とも思える犯人指摘からロジックで畳み込む豪腕が断トツ。
 
第二位は東川篤哉流の「長い墜落」だろう「霧ヶ峰涼の屋上密室」で。
 
第三位はこの中では一番読ませてくれる「ある映画の記憶」恩田陸で。
 
なかなか個性のある選出だったので、採点は7点。