死と奇術師
この作者はこれがデビュー作なんだとか。
冒頭の献辞が捧げられてるのはカーだし(「三つの棺」の密室講義も
途中の検討で使用される)、謝辞に挙げられてる作家の面々が
島田荘司含めて、いかにもな感じで、アルテに続く期待感が高まる。
最初の密室の解法が非常に良かった。
いくつかの錯誤を組み合わせて成立させる、心理トリックが見事。
これ以上は無い形で、犯人を指摘できるのも極めて爽快。
ところが一方、二番目のエレベータの密室は、読んでも全く頭に入ってこなかった。
理解しようという気力すら沸かない感じだったな。
これなら、まだアルテの腰砕けトリックの方が、わからないよりはマシと思えたくらい。
ということで、この作者の本当の持ち味が後者だとしたら、
期待外れに終わってしまう可能性もあるな。
不安と期待ない交ぜにして、二作目を待つか。
第一のトリックが良かったし、ポケミスとしては
バリンジャーの「消された時間」以来64年ぶり二冊目
という袋とじの趣向も買って、採点は8点で。