新・三つの棺-「幻影の書庫」日記

本格ミステリ書評サイト「幻影の書庫」の旧管理人のブログです。カテゴリー欄の全レビュー索引より、書評、映画評、漫画評、その他評の全一覧リストを見ることが出来ます。同じくカテゴリー欄の年間順位表より各年度の新刊ミステリの個人的ランキングを確認出来ます。

バベルの設計士(上)(下)


建築学科出身の理系作家が描く、ノアの末裔である天才建築士が、
バベルの塔の建設に挑む物語、という題材的にはむっちゃ面白そうな作品。
 
装丁もとても良い本だし、結構期待してた作品なんだけども、
思ってたのとは相当違ってた。
 
だって建築学科出身を帯で売りにしてるし、バベルの塔を建てる話なわけだし、
どう考えてもそこがメインだと思うやん。
 
さあ、これから挑むぞ、ってところまでのいわゆるプロローグ的な部分が、
この上下巻のおよそ4分の3。
 
で、次の1ページでバベルの塔が建ってた(笑)
 
理系的な愉しみが味わえるものと期待してたら裏切られた。
深みの無い人間ドラマと、底の浅すぎる権謀術数しかなかった。
「言語を統一する」ってのと「バベルの塔」の関連性もさっぱり理解出来ず。
そもそも聖書の記述とは逆なわけだし。
最後はデウス・エクス・マキナで、全て水に流して終わりって感じだったし。
 
ってことで基本発想はとても良く、ポテンシャルは高かったのに、
そこまでの高みを満たせず途中崩壊した、作品自体もバベルの塔だったようだ。