新・三つの棺-「幻影の書庫」日記

本格ミステリ書評サイト「幻影の書庫」の旧管理人のブログです。カテゴリー欄の全レビュー索引より、書評、映画評、漫画評、その他評の全一覧リストを見ることが出来ます。同じくカテゴリー欄の年間順位表より各年度の新刊ミステリの個人的ランキングを確認出来ます。

invertⅡ 覗き窓の死角

 
ドラマ「霊媒探偵城塚翡翠」の最終話でも、またきっと日本中の多くの視聴者の
度肝を抜いたであろう、翡翠たんの倒叙作品集二作目。
 
本作では「生者の言伝」と表題作の二作が収録されているが、
やはり倒叙作品とは思えないくらい本格度は高く、それぞれにツイストも用意されている。
とはいえ、巻を追う毎に驚きのインパクトはしぼんできているのは間違いあるまい。
 
スリードの手法で、倒叙物にも新たなパターンを構築しようとしているのは
流石だと思う。自身もマジックをたしなむ作者ならではの見事な手筋だろう。
 
そういう形式の工夫としては、「生者の言伝」の方がわかりやすいのだけど、
巧さに舌を巻くのは断然表題作の方だなぁ。
 
右手に注目を引きつけておいて、左手で種を仕込むという、
マジシャンの手法が小憎らしいほどに効いている。
なんか「容疑者Xの献身」を想起させられてしまった。
 
とはいえ、インパクトとしては弱まってきてるので、採点は7点。
 
倒叙形式に工夫を入れるのも、もうネタ的にも苦しくなってくるだろうし、
そろそろお次は翡翠たんで本格物に回帰してもらえないものか。