新・三つの棺-「幻影の書庫」日記

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魔物が書いた理屈っぽいラヴレター

 

君が生きのこらせる方法はこれしかなかった――。中世に作られた城壁の隠し部屋に魔物が現れた。次々に人が殺されていく中、君の命を救うために仕掛けた、必死の俺の禁断のトリックとは!? 魔術師・林泰広の技が冴える空前絶後のマジック・ミステリ。

 
前作「オレだけが名探偵を知っている」も奇想の手順に回帰した、
活字でマジックを仕掛ける作品だったが、本作もまさにそう。
 
前作の感想で「是非この路線で、驚くしかないような、とんがった作品を読ませてください。」
と書いたが、本作こそはその”とんがった作品”で間違いないだろう。
 
通常の本格ミステリとは、全く違った着想と解き味。
上記のあらすじを読んで、クローズドサークル物のミステリを
想定していたら、あまりにも違う代物で、驚かされてしまった。
いや、ある意味、究極のクローズドサークル物であることには違いないんだけど。
 
ただ、その解き味は、本格特有のロジックで解き明かすというものではなく、
どちらかと言えば、ロジックを探し出すという類いのもの。
その意味では、本格の中でも不可能犯罪物に一番近いのかな。
 
パターンは全く違えど、処女作に一番近づいた作品なのかもしれない。
 
その回帰は嬉しいものの、8点を付けるにはちょっと躊躇してしまうな。
採点は8点に限りなく迫る、ギリギリの7点ということで。
 
ちなみに本作もロミジュリ物にもなってるんだけど、
「分かったで済むなら、名探偵はいらない」の時に思いついてたネタなのだろうか。
それとも思考が常にその方向に向かうほど、お好きなのだろうか。