- 作者:林 泰広
- 発売日: 2020/06/23
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
マイフェイバリットなデビュー作、「見えない精霊」の作者。
3年前の再デビュー作品「分かったで済むなら、名探偵はいらない 」は、
あまりにも作風が変わった薄味作品だったけど、
今回こそは、デビュー作の雰囲気に回帰した、奇想の手順で書かれた作品。
現実味などくそくらえの、読者を思いっきり選びまくるような、キレた作品で、
心の中では「いけいけ、ゴーーゴー!」と片手振り回して、快哉を叫んではいたんだけど、
最後まで報われたかというと、実はそうでもない。
デビュー作同様、本作も活字でマジックを仕掛ける作品(しかも種明かし有り)。
だけど、マジックが種明かしされる際に、裏で行われていたあれこれの仕込みや手順に対し、
そうだったのか!と驚愕したり、なるほど~!と感嘆出来るマジックと、
単純な手順の羅列だけで何の面白みも感じられないマジックがあるよね。
デビュー作と本作では、それが前者と後者に別れてしまった印象。
最後に何か一つ報われるものがあったら良かったんだけどなぁ。
タイトルの意味する”名探偵”って、これだと本格ミステリの世界に住む”名探偵”じゃなくって、
業務手順がしっかりしてる、超優秀な現実界の”名探偵”にすぎないよね。
そんな名探偵は求めちゃいない。
雰囲気の回帰だけはとても嬉しかったので、次への期待感を込めて、えこひいきの7点。
是非この路線で、驚くしかないような、とんがった作品を読ませてください。