茶箱広重
収録作品は「茶箱広重」「縦走路」「黒まんとの死」「俺が愛した女」
「陽炎街」「ほっぺたの時間」「水茎」の7作品。
一ノ関圭に関しては、昨日書いた通り。
作品一つ一つの密度からいって、寡作なのはむべなるかな。
一つの短編に込められた人間ドラマがずっしりと重い。
でも、そのまま絶筆されてるのが、非常に残念。
あと「鼻紙写楽」を買えば、ほぼ完了なんだものな。寂しい限り。
やはりベストは本書の約半分ほどを占める表題作で決まり。
わずかの資料をもとに、ほぼ想像で作られた作品なんだろうが、
半端無い説得力をもって、重厚な人間ドラマが活写されている。
第二位は「俺が愛した女」で。
この短さの中に一本の映画以上の人間ドラマが凝縮されている。
第三位はやはり史実をベースにした「水茎」を選びたいところでもあるし、
ミステリ的な展開で読ませる「縦走路」を選びたいところでもあるが、
一ノ関圭全作品の中でも一番のタイトルと思う「ほっぺたの時間」にしてみよう。