新・三つの棺-「幻影の書庫」日記

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らんぷの下

 
収録作品は「らんぷの下」「だんぶりの家」「女傑往来」「すがの幸福」
ドライフラワー」「裸のお百」「寒雷」「女傑走る」の8作品。
 
とにかく美麗。
画力は歴代の漫画家の中でもでもピカイチの部類だろう。
 
東京芸大の油絵科出身だけあっての画力だろうが、
作品の題材も美術界を舞台にしたものが多い。
また、そういう作品に説得力をもたらすのも、この画力ゆえ。
 
そして、その一作一作の密度が本当に濃密。
特に実在の人物をモデルにする作品群は、「茶箱広重」の高橋克彦の解説にもあるように、
相当な事前調査や考察が重ねられているのだろう。
画力だけではない説得力は、そういうところからも生まれている。
 
そういう意味でも、表題作と「裸のお百」が特出しているだろう。
実在の青木繁をモチーフにすることで、主人公二人の肉付けが完璧となった表題作。
史実をベースに日本初のヌードモデル(お百自体は想像の人物なんだろうか?)を描いた後者。
埋もれた傑作というものを想像のもとに現出させたこちらの作品の方が、自分にとってはベストかな。
ベスト3のもう一作を選ぶと、ミステリ色も強い「女傑走る」だな。