新・三つの棺-「幻影の書庫」日記

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安楽椅子探偵と忘却の岬(推理編)

有栖川繋がりってことで。
〆切も過ぎたので、一応私の応募した回答を書いておくことにする。でも断言していいけど、これは正解ではないよ。
というのも、今回はなんだか二つの推理の方向性があって、それが結局全く交差することがなかったんだよね。その交わるポイントに正解があるはずだと思ってるんだけどさ。今回はひょっとして、これまで(といっても全部見てるわけじゃないが)で一番難しかったんじゃないのぉ〜?
 
ってなわけで、ネタバレゾーンへ Let'sら Go〜!(死語もしくはオヤジ語)
 
 
 
それでは、取りあえずまずは、私が送った回答から。


真犯人の氏名は 
佐多真紀


★殺人現場
  納屋の横開き戸の奥にある椅子。そのまま放置されて死後硬直。
  その格好の偽装の為、外出用の車椅子で夜に岬に運ばれた。
★死体移動の根拠
  男の足跡の上に車輪の跡があった。
  朝とは別に車椅子が使われた証拠。
★殺人時刻
  都井が庭を離れた6時20分〜40分の間。
★物理的アリバイ
  室戸・佐多は30分に互いを見ていて時間的に無理。
  泰江・日向も35分まで立ち話をしていて時間的に無理。
  正太郎・エリ・卓也・真紀にはチャンス有り。
心理的アリバイ
  立石が納屋にいたのは、犯人に教えられそこで卓也を待っていた為。
  ストーブの件を知っていたのは、正太郎・日向・真紀・卓也。
  卓也であればそもそも待つ必要はないので、残りの三人。
★結論
  両方の条件を満たすのは、正太郎と真紀。
  しかし、正太郎は立石を運べないので、犯人は真紀。
★動機
  立石が卓也のことを世間に公表するのを阻止する為。
  「思いだせ」はショック療法で記憶の回復を狙った為。

以上、396字。
 
最初はほぼ同じ推理展開でメイド犯人説にしていた。
心理的アリバイ その2
  確実に犯行を行うには、都井がTVを見に離れる時間が予測できたことが必要。
  日向か、電話越しにTVの音を聞いたことのある正太郎。
 
でも、これならば、日向が25分までも台所にいたことが不自然。確実にTVの時間が読めているわけだから、20分を過ぎたらすぐ行動を開始してるはず。ってことでこれを却下すると、この推理の方向性(死体移動)からは、上記のような結論になっちゃったんだけどね。5分あれば充分なんじゃないの?ってのは自分でも思うけど、出題する側の心理としてはもっと余裕を取るはずだと思うし。
ストーブを取りに行った際も、真紀は開き戸の前に陣取っているよね(奥に死体があるのだもの)。そのため手伝いを申し出るタイミングが遅れている。しかしなぁ〜、卓也を守るために殺したにしては、自分の殺人で逆に卓也を追い詰めちゃってるんだよなぁ〜。
 
でもって、先程二つの推理の方向性と書いたのは、つまりこの「死体移動」と、もう一つが「時制誤認」。たとえば、こちらの「時制誤認」からだと、こういう結論を導き出すことも可能。


真犯人の氏名は 宗谷正彦
 
事件は2008年6月に発生しているので、トンネルが開通済み。これを通って来ることが出来た。
 
★2008年である根拠
 ・TVで北京オリンピック直前の報道をしている。
 ・卓也が読んでいる新聞に前日の地震が書かれていたが、実際は発生していない。
 ・新聞に書かれていた飯田シンの新曲と、TVで放映されてた曲が違う。

つまり「唯一クローズド・サークルの外にいた人物が犯人」という趣向なわけやね。でも、ここから先、さっぱり推理が進まなかったのだ。それに、この時制誤認はあまりにもあからさまだったしね(95%の人は気付いたと思うな)。
で、そもそも次の疑問が結局全く解決できなかったんだよなぁ。
 
★何故2007年だと卓也に誤認させる必要があったのか?
  卓也の父の事件(1992年6月)は既に時効(15年)になっているが、
  それがまだだと勘違いさせたかったのだろう。でも、いったい何故?
 
ここから、こんなアクロバティックなことも考えられたりして。


真犯人の氏名は 潮野卓也
 
卓也以外の人物は、現在が2008年だと知っている。つまり時効は成立しているのだ。
殺してまで卓也をかばう必然性はない。唯一、阻止しようとするのは、
現在が2007年だと誤認している人物。つまり、卓也自身、しかいない。

な〜んてね。このシリーズ初めて「主人公自身が犯人」という大どんでん返しに挑戦!ってか。記憶喪失物と思わせておいて、実は二重人格物?
 
この時制誤認が「真紀も時効がまだだと思っていた」という方向に繋がれば、二つの推理の方向性が交差して満足すべき回答になったと思うのに。動機が弱いんだよな(って、このドラマの場合、動機なんて考える必要はないのかもしれないけど)。
 
う〜ん、でも、ほんとになんで、みんなして2007年だと誤認させる必要があったんだろ? 誰か一年間海外に行っていた(その期間時効停止)というような話もなかったし。正太郎が「もう少しの辛抱だ」と言っていたのも、ずっと気になってるんだけどね。
 
勝手に卓也だけが一人自爆してただけってことはないよな。わざわざ一年前の新聞を渡してるんだもの。時効目前の「海馬岬殺人事件」のドラマの広告欄見せて、記憶を刺激しようとしたってことでもないんだろうし。夜中に用事言いつけられたメイドの報復ってわけでもあるまい。
 
とにかく、この時制誤認が推理に絡んでこないようじゃ、正解には辿り着けないわな。主人公が気を失った時点で、2007年から2008年へのトビがあったのかも、とも考えてみたのだが、やはりそこからも推理の進めようがなかった。
 
最後に、残ってる他の疑問をまとめ。
 
★卓也の父を殺したのは誰? 同じ犯人?
  おそらく正彦。じゃなかったら正太郎。
  傷としては左利きの人物を示唆してるのかと思ったけど、それっぽい人はいなかった。
  でも、同じ犯人だとしたら、「思いだせ」の行為は矛盾するのでは? 
 
★そもそも卓也は何をするために帰ってきたのか?
 
★冷蔵庫の中にあるものは何?
  賞味期限の表示から、2008年だと気付かれるのをおそれただけ?
 
終結論としては、今回も楽しませてもらいましたよ、ってことで敗北宣言。
解決編で驚かせてもらいましょ。