大唐帝国の帝都・長安で生ずる、奇怪な連続殺人。
屍体は腹を十文字に切り裂かれ、臓腑が抜き去られていた。
犯人は屍体の心肝を啖(く)っているのではーー。
崑崙奴ーー奴隷でありながら神仙譚の仙者を連想させる異相の童子により、捜査線は何時しか道教思想の深奥へと導かれ、目眩めく夢幻の如き真実が顕現するーー!
メフィスト賞の中でも異色さは群を抜く「火蛾」の作者が24年振りに復活。
太田克史だからこそ引きずり出せたってとこなんだろうなぁ。
その前作はイスラムをテーマにした難解な作品だったので、
個人的には評価の難しい作品だった。
”核”となる部分が宗教そのものの形であり、
その理解なくして、どこまで語って良いのかわからなかったのだ。
今回は大唐帝国の時代の中国が舞台。しかも道教が重要なテーマの一つ。
というわけで今回も難解さを覚悟したのだけど、実は杞憂だった。
漢字の読みが難読(通常の難読漢字の知識では歯が立たない)なので、
そこだけは苦労するものの、意外にエンタメで非常にわかりやすい。
本格ミステリという面で目を見張るものこそ無いが、
構図やこういう時代でしか成立し得ないような動機等も含めて、
通常のミステリとしては非常に楽しめる作品。
本ミスよりもこのミスの方で、上位に入るであろう作品かと。
本格的な強さは無かったので、個人的な採点は7点止まり。