新・三つの棺-「幻影の書庫」日記

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あと十五秒で死ぬ

あと十五秒で死ぬ (ミステリ・フロンティア)

あと十五秒で死ぬ (ミステリ・フロンティア)

  • 作者:榊林 銘
  • 発売日: 2021/01/28
  • メディア: 単行本
 
第12回ミステリーズ! 新人賞佳作入選「十五秒」が評判良かったためか、
本書のタイトルに挙げられている状況設定型ミステリを
それ以降三作も追加して刊行された、デビュー作品集。
 
こんなコンセプトの場合、結局はその最初の作品を越えるものは無く、
苦し紛れ感が出ただけで終わってしまうのが通常路線だけど、
意外にも二作目の「このあと衝撃の結末が」の方がベストだった。
ただ、ちょっと作り込みすぎかなとは思ったけど。
阿津川辰海の「第13号船室からの脱出」はあり得るギリギリ路線だったけど、
本作は難解すぎてリアルさを越え過ぎちゃったかなぁと。
 
不眠症」「首が取れても死なない僕らの首無殺人事件」は、
そもそも「あと十五秒で死ぬ」というコンセプトが、
ちょっと違う方向に行っちゃったかなぁという、苦し紛れ感がやっぱり出てる。
まぁ後者は作り込みはなかなかされてて、どういう落とし所にするのかという点も含めて、
中編として充分愉しめる作品ではあったけどね。犯人指摘のとこはイマイチだったけど。
 
状況設定で攻めてるし、一作目を越えた作品があったことを一応評価して、
採点はギリ7点にしておこう。