名探偵のいけにえ
ミステリとしてのロジカルさには定評あるものの、
アンソロジーに収録された数編の短編いずれもが、
どうしてもそのグロさがとても自分が許容できるものではなかったので、
もうこの人の作品は読まないと決めていた作者。
さすがに本書に関してだけは、これだけ高評価だと読まざるを得ないと腰を上げたが、
本作には全くグロさは感じられなかったし(凄惨な死体描写が軽くあった程度)
これはたしかに”読まなくてはいけない”作品だった。
この多重推理は凄い!
非常にロジックが整然としている。
それぞれに隙が無く感じられる。
宗教という特殊条件を組み入れた上で、
これだけロジカルに、二者択一の多重推理を組み上げ
(最初の捨て推理を入れれば三重の)
それぞれに意味のある解決を示せるのは、信じ難いほど驚異的。
これはミステリを愛する者、特にロジックを愛する者は、
”絶対に読むべき作品”と断言しても良いのではないか。
更に大きなどんでん返しまで魅せてくれたりするし。
採点は8点。「名探偵に甘美なる死を」すら超えて、
昨年度の第二位としたい。