新・三つの棺-「幻影の書庫」日記

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透明人間は密室に潜む

透明人間は密室に潜む

透明人間は密室に潜む

 
なんと本ミス1位、このミス2位か。
昨年度の「紅蓮館の殺人」に続いて、凄い評価だな。
 
「透明人間は密室に潜む」
「ベスト本格ミステリ2018」で既読だけど、二度読んでも本作は自分には受け容れられない。
旦那が嬉々として妻を陥れる方に加担してるように見えて、どうにも気持ちが悪くなってしまうのだ。
せめて事件が起きる前に止めることは不可能だったという状況に描いて欲しかったし、
事が起きた後も、あの手この手で逃がそうとするけど、全て探偵に阻止され、という流れが欲しかった。
動機の意外性も本作の見所なんだろうけど、いくらなんでも成立しないだろと思えるし。
 
「六人の熱狂する日本人」
まぁ、これはミステリ的にどのこうのより、読んでて楽しい。これに尽きるな。
 
「盗聴された殺人」
一つの違和感から、ロジックが繋がって、意外な犯人をあぶり出す秀作。
作者の謎解きの姿勢が良く表れてる作品だと思う。
まだシリーズ探偵を作るつもりは無さそうだが、このコンビ探偵は
充分短編集が作れるだけの作品を産み出せそうに思う。
 
「第13号船室からの脱出」
おお、これは傑作。脱出ゲーム自体の作り込みが半端無い。こんなの絶対に解けんな。
でも、おそらく極めて少数だけど解ける人はいるだろうな、と思わせてくれる絶妙の巧みさ。
ショートカットも出来るようになってるわけだもの。
最後までツイストを見せてくれるし、コレが自分のベスト。逆順で良くなった。
 
本格の魅力を多面的に見せてくれる作品集ではあったけれど、
年間ベスト級とまでは感じなかったな。採点は7点。
とはいえ、今年はまだベスト級作品には巡り会えておらず、年間順位表では暫定1位。