新・三つの棺-「幻影の書庫」日記

本格ミステリ書評サイト「幻影の書庫」の旧管理人のブログです。カテゴリー欄の全レビュー索引より、書評、映画評、漫画評、その他評の全一覧リストを見ることが出来ます。同じくカテゴリー欄の年間順位表より各年度の新刊ミステリの個人的ランキングを確認出来ます。

ノッキンオン・ロックドドア

ノッキンオン・ロックドドア (文芸書)

ノッキンオン・ロックドドア (文芸書)

「不可能(HOW)」専門の探偵と、「不可解(WHY)」担当の探偵。
こんな特徴付けをした二人の探偵を主人公に据えることで、
ハウとホワイの絡み合いを、よりはっきりと読者に意識付けできる。
 
一見ハウが問題のように見えて、実はホワイの方が重要だったり、
その逆だったり、というのがダイナミックに描けるようになってる。
なるほどの工夫と言えるだろう。
 
しかもロジックを重んじる作者だからこそ、
更に効果を生み出せてるとも言えるように思う。
 
本来、不可能や不可解は必ずしもロジックとは結びつかない。
不可能はただ一つの解を見つけられればいいだけの話だし、
不可解はひらめきだけで一足飛びに辿り着けたりする。
 
ただ、それだとばらばらの飛び地にしかならない。
これを中心軸にロジックを据えることで、ハウとホワイが
バラバラにならずに、うまく絡み合えてるんだと思う。
 
昨年の第一位はダントツで「図書館の殺人」だったが、
第二位にも本作を選んでしまおう。採点は7点。
 
ベストは「髪の短くなった死体」。
「十円玉が少なすぎる」が次点かな。