新・三つの棺-「幻影の書庫」日記

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わたしの隣の王国

わたしの隣の王国

わたしの隣の王国

『現実と非現実の両方を描いている』という前提の元でしか
成立し得ないトリックを巧みに配置している。
 
こういうタイプの有名な先行作
クラインの壷」「ローウェル城の密室」「虚擬街頭漂流記」「アリス殺し」
なども、それぞれに優れた(あるいはおかしな)着想を持っていたが、
本作も同様に今後の一つの指標にもなり得るものかもしれない。
 
それにまた、過去の長いミステリ史の中でも、
成立させている作品はごくごくわずかしかない趣向も。
 
……とまぁ、そういう意味で意欲作であることは間違いないんだけど、
なんか妙にのめりこめない。すっきりいい作品だったと思わせてくれない。
 
大きい要因は、非現実側の描き方かなぁ。
大袈裟な割にはなんだか目的がちゃちっぽくて、
なんか裏ありそで特になく、達成感も無いまま。
 
そもそも仮想現実ってわけでもないし。
 
現実の方は現実の方で、なんかごちゃごちゃしてて。
とある過剰な物理トリック含めて、意のみ走りすぎてて、
読者が逆に置いてけぼりになってしまったような印象。
 
ポテンシャルは高かったので、7点にはしたけど、
順位としては昨年度の第5位としよう。
明日、昨年度の順位一覧を掲載予定。