藤村正太探偵小説選 1,2

藤村正太探偵小説選〈1〉 (論創ミステリ叢書)

藤村正太探偵小説選〈2〉 (論創ミステリ叢書)

大学時代に「宝石」誌を漁ってた身としては、
本書はこの名前ではなく「川島郁夫探偵小説選」の方がしっくりくるなぁ。
そもそも川島郁夫名義で発表された作品だけを集めたものらしいし。
　
この頃の著者はトリッキーな作品が多かったし、
なかなか構図も凝ってる作品が多いという印象だったので、
かなり期待してたんだけど、ちょっと買いかぶりすぎだったかなぁ。
　
割と正統派で手堅くは読めるけど、自分が国内古典短編のファンである
要因だと思うところの、奇想とかちょっと滅茶苦茶な部分だとか、
型が通用しないとんがったところはやはり薄いかと思う。
　
二冊通してのベストとしては、迷い無く「盛装」を選択したい。
詰め込みすぎという評価もあるようだけど、
大きな二つの着想が盛り込まれた秀作であることは間違いあるまい。
古典本格短編の中でも、特に優秀な作品の一つだと思う。
　
第二位は「残雪」。
ハウダニットのみに着目してると、足下をすくわれる。
一番基本的な形で使われるトリックと、それを隠れ蓑とする着想があいまって、
これも歴史的な名作の一つに数えることが出来るだろう。
　
第三位は「妻恋岬の密室事件」で。
逆転の着想のトリックがやはり秀逸。
まぁそのハウダニットが全てなんだけど。
　
次点を選ぶとすれば、デビューのきっかけになった
「或る自白」「接吻物語」になってしまうかなぁ。
個人的な好みだと、「接吻物語」の方を上位にするかな。
　
上位に入れた二作品が、特別に好きな作品だったので、
ちょっと期待を大きくしすぎちゃったかな。採点は７点。