新・三つの棺-「幻影の書庫」日記

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悪夢はめぐる

原書房様からの頂き物。いつもありがとうございます。

悪夢はめぐる (ヴィンテージ・ミステリ・シリーズ)

悪夢はめぐる (ヴィンテージ・ミステリ・シリーズ)

一風変わったミステリをおもとめの貴方に、
今年はこの一冊があるのかもしれない。
 
いわく”黄金時代のB級ミステリ”
 
B級だと侮ることなかれ。
わざわざ選り抜きで邦訳するのは、それなりの理由があるから。
森英俊がB級の代表作として挙げている作品は
「赤い右手」「死の相続」「おしゃべり雀の殺人」などだし、
超有名作家の作品の中でも「盲目の理髪師」「ドラゴンの歯」「帝王死す」
なども含まれてる。
これらに並ぶような作品だと称されてるだけで、読む気になるってもんでしょ。
 
一見は、というかほぼほぼ終盤近くまでは、通俗冒険小説のノリ。
 
ところが死体が出てきてからは、モードが突然切り替わったがごとくにミステリに。
何せ密室内の溺死体という、魅力的な死体だったりするわけだ。
ミステリマニアの刑事による、ねちっこ過ぎるほどの密室検証の楽しいこと。
 
そういうミステリ手順をしっかり踏みながらの、実はバカミスという真相暴露。
唖然としつつも爆笑。とはいえ伏線もあるもんだから、充分"有り"のバカミスっしょ。
 
ところが笑ってばかりもいられないとばかりに、
ラストはまさかの幻想ミステリに。
 
ホラー色まで感じさせる、気の狂ったようなラストに、またまた驚き。
こういう後味の悪さもB級ミステリならでは。
 
さすがに「赤い右手」「死の相続」ほどではないけれど、
なかなかの珍味が味わえたので、採点は8点。