新・三つの棺-「幻影の書庫」日記

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相棒5 第17話 女王の宮殿

2/14 TV朝日放送分。
久しぶりに録画した分を見たら、あまりの名作で嬉しくなってしまう。
冒頭のシーケンスから、クローズド・サークルっぽい館に誘ってくれる、本格の香りプンプンのつかみから、もうたまらない。
事件の匂いは薄い中、進められるのはなんと、Vanishing Lady テーマではないか。確かにいたはずなのに消えた貴婦人。でも、周りは皆そんな女性は知らないという、「バルカン超特急」などで扱われているテーマ。消えるのは白鼠、アルジャーノン。凄いぞ、キイス読んでるおぼっちゃん(ちゃうんだろうけど)。
次々に繰り出される小技のロジック。「人数が合わないんですよ」キャー、素敵、右京さん。彼のこういう台詞って、いわば「読者への挑戦状」なんだものね。
そして隠された事件の解決シーン。名探偵皆を集めてさてといい、のケレン味。指さされたときはあたし、綾辻の某短編みたいなメタ・ミステリかと、一瞬思っちゃいましたわよ。
ここまででも濃厚な推理ドラマだったんだけど、これで終わらないのがやはり相棒。しっかりと最後まで魅せてくれたよ。全編に渡っての大空真弓との絡み台詞も抜群だったし。雰囲気が全て良いのよ、良いのよ。
ほんと吃驚するくらいの名作。
ちょっと一点だけ、ネタバレ・フィールドにて。
 
 
 
 

「いつからわかってたの?」に対しての「しいて云えば最初から」のところが、自分としてはイマイチよくわからなかった。そこに違和感を覚える要素は、特になかったように思うんだけど。
 
たとえば、だけど、このシーンで大空真弓に手袋をさせておくのはどうだろうか? 勿論、後のシーンでは外させておく。
 
「何故、室内で手袋を?」という一つの違和感で始めておくのだ。
 
後で動物アレルギーというのが判明した時点で、
あのとき彼女は手に蕁麻疹が出ていたから隠していたのだ ⇒ だから、その直前に動物を見ているはず ⇒ この屋敷内にいる動物はアルジャーノンだ ⇒ 見つからないアルジャーノンは隠し部屋にいるはず ⇒ つまり、彼女はあの直前に隠し部屋に行っていたはず。でも、何故そのことを隠す必要があったのか? ⇒ 隠すべき何かが隠し部屋にあるはず
という一連のロジックを付加することが可能だったと思うのだけどな。
 
ここまで事前に推理できていれば、数の合わないもう一人の人物が館内にいるはず、という条件を掛け合わせると、おのずと回答は一つに絞られる。これだと「しいて云えば最初から」の意味合いがもっとはっきりとしたんじゃないかと思うんだけど、どうだろうか?