- 作者: 米澤穂信
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2018/12/14
- メディア: 単行本
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読んでて当たりが続く時期ってのはあるもので、これもホントに見事な作品。
とにかく端正なロジック、ロジック、ロジック。
米澤穂信史上でも、ベスト1級のロジック作品なのではないだろうか。
ただ、それだけロジックにこだわり抜いた作品であるにもかかわらず、
無味乾燥な作品になっていないのも、本書の興味深い点。
それは、ロジックでたどり着いたその先に、ロジックだけでは解明し尽くせない
心理の分岐点を残して、そこを二人の探偵に割り振っているところにある。
極端なくらいのロジック小説を、ロジックだけの作品にはせず、
小説としての意味合いをきっちりと持たせた工夫。この点も非常に素晴らしい。
ベストは、米澤流9マイルの変奏曲であろう「ロックオンロッカー」で決まり。
「必ず」の一言だけから展開するロジックという面白さに加えて、
犯人絞り込みのロジックも非常に精度の高い名品。
ところで五話目の「昔話を聞かせておくれよ」を読んだときに、
ちょっと待て、これは成立しないぞ、と声を大にして云おうと思ったんだけど、
書き下ろしの最終話「友よ知るなかれ」で説明されてて、納得させられた。
しかも、穴を指摘されて慌てて取り繕ったんじゃないのぉ~、と指摘されないために、
名前の謎解きも残しておく(わざとだよ!と言うための保険)という用意周到さだ。
でも、雑誌掲載時に読んだ読者は、単行本読むまでの数ヶ月間、氏のミスだと思ってたはず。
米澤さん、イケズだわぁ~(笑)
とにかく端正なロジックを満喫できる、ミステリ趣味人のための貴重な一冊。
採点は迷い無く8点。えっと、刊行は今年ではなくて、去年の12月だったのか。
うん。ということは、昨年度の順位表を塗り替えて、これを1位に!